国内小売企業が越境EC経由の一部商品を警戒、政府に輸入税のルール改正を働き掛け

(ブラジル、中国、米国、シンガポール、アルゼンチン)

サンパウロ発

2022年04月07日

ブラジル現地紙「エスタード」は3月23日、現地の小売企業アバンのルシアーノ・ハング共同創業者や電気小売業ムルチレーザーのオストロ・ウィエッキ最高経営責任者(CEO)らの経営者グループが、大統領府や一部の上院議員に対し、「中国のアリエクスプレス(Aliexpress)やシーイン(SHEIN)、米国のウィッシュ(Wish)、シンガポールのショッピー(Shopee)、アルゼンチンのメルカドリブレ(Mercado Livre)などの越境ECプラットフォーム経由で国内に流入する個人消費商品のうち、正しく輸入税を課されていないものが多数ある」との苦情を申し立てた、と報じた(注1)。こういった国内の小売業者は、越境EC(電子商取引)プラットフォーム経由で中国などから流入する商品との競合激化に対し、大統領府や一部の上院議員に対し、輸入課税の一部ルール改正を働き掛けているという。

また、3月25日付の現地紙「グローボ」によれば、政府はこの解決策として、輸入税を課すタイミングを商品の通関時ではなく、消費者が越境ECプラットフォーム上で商品を購入する際に変更する内容を検討しており、CIF価格が50ドル未満の製品も課税対象とする大統領暫定措置令を検討している可能性がある、と報じている。

現状では、1999年6月24日付財務省規則第156号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、発送者と受取人が個人の場合、国際郵便物や国際航空小包といった簡易通関において、CIF価格(保険、送料込み)が50ドル未満の場合は非課税扱いとすることが定められている(注2)。3月23日付現地紙「エスタード」によれば、販売者側が「50ドル未満」という条件を満たすため、越境ECプラットフォームで表示される商品販売価格が実際にはアンダーバリュー(過少申告)でブラジル国内に流入するケースがあることや、越境ECによる商品流入量が多く税関での検査が十分に行き届かないため、本来、課税対象となるべき商品の徴税を取りこぼす問題がある、と指摘している。

(注1)3月23日付現地紙「エスタード」によれば、国内小売企業の経営者グループは、越境ECプラットフォーム経由の商品が低価格帯の商品や模倣品との厳しい競争にさらされている業界団体、具体的には、ブラジル玩具製造協会(Abrinq)、全国ブラジル繊維衣料工業協会(ABIT)、ブラジル電気電子産業協会(Abinee)、全国電気・電子製品製造業者協会(ELETROS)、ブラジル全国反海賊製品フォーラム(FNCP)と共に、連邦警察庁特捜局(PRG)に対し、海外からの不公正な方法による商品流入との競争にさらされている旨を記載した書簡を送った。ただ、3月25日付の現地紙「グローボ」によれば、例えばアリエクスプレスは「各国市場で順守すべきルールに従っており、違法な売買をあっせんするつもりはない」と反論している。

(注2)個人向けの場合、50ドル以上100ドル未満でも1980年9月3日付法律第1,804号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、非課税のケースが多くなっているのが実情。

(古木勇生)

(ブラジル、中国、米国、シンガポール、アルゼンチン)

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