日系EVバッテリーメーカーのエンビジョン、米ケンタッキー州の新工場建設に20億ドル投資へ
(米国、日本)
ニューヨーク発
2022年04月21日
日系バッテリーメーカーのエンビジョンAESCは4月12日、米国ケンタッキー州ウォーレン郡ボーリンググリーンに電気自動車(EV)用バッテリー工場を設立するため、20億ドルを投資すると発表した。新工場の敷地面積は約300万平方フィート、バッテリーの年間生産能力は30ギガワット時(GWh)で、2,000人の雇用を創出する。プレスリリースによると、2025年に生産を開始し、2027年までに複数のメーカー向けに年間最大30万台分を生産することを計画している。また、工場の稼働に必要なエネルギー源については、全てテネシー川流域開発公社(TVA)が供給する再生可能エネルギーで賄い、州の脱炭素化に向けた取り組みにも貢献する。
エンビジョンは、日産自動車やNEC、NECトーキンが2007年に設立した車載用高性能リチウムイオンバッテリーの設計製造会社。日産の「リーフ」用電池の生産で実績を上げ、米国では2012年からテネシー州スマーナで生産している(生産能力は年間3GWh)。今回の投資先のケンタッキー州には、トヨタが世界最大規模の生産拠点を構えるほか、ゼネラルモーターズ(GM)やフォードをはじめとする自動車関連企業が多く集まる。エンビジョンの松本昌一最高経営責任者(CEO)は「米国の次世代EVに電力を供給する次世代バッテリー戦略の一環として、ケンタッキー州とボーリンググリーン市と提携できることをうれしく思う。この大規模投資は、電動化のサプライチェーンの発達を支援し、この地域の将来世代に価値の高い雇用を確保する」と述べ、地域への貢献を強調した。
ケンタッキー州では最近、フォードと韓国のSKオン(旧SKイノベーション、注)によるバッテリー工場の設立が発表されるなど、EV関連の大型案件が続いている(2021年9月29日記事参照)。今回のプロジェクトに関連して、州政府はエンビジョンに最大1億1,680万ドルのインセンティブに加え、技能訓練に最大500万ドルの助成金を提供する。同州のアンディ・ベシア知事(民主党)は「世界をリードするEVバッテリーテクノロジー企業のエンビジョンAESCがケンタッキー州を選んだことに興奮している。今回の投資により、州内のバッテリー生産量は(年間で)116GWhに増え、国内トップクラスのEV用バッテリーの生産州となる」と述べ、EV関連事業の拡大に期待を寄せた。
(注)SKイノベーションは2021年10月1日に分社化し、バッテリー事業の新会社SKオンが発足した。
(大原典子)
(米国、日本)
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