タイで物価上昇続く、ADBは東南アジアのインフレ加速を予想

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

バンコク発

2022年04月13日

タイ商務省は4月5日、2022年3月の消費者物価指数(CPI)上昇率(前年同月比)が5.7%だったと発表した。前月の5.3%を上回る水準で、2008年9月(6.1%)に次ぐ高水準となった。ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、国際エネルギー価格が上昇したことにより、「エネルギー」の物価指数は32.4%上昇し、家庭の「電気・燃料・水道」は28.2%上昇、「車両・車両運用」は16.8%上昇と2桁増になった。「食料・非アルコール飲料」も4.6%上昇した。「肉類」は9.8%上昇と、高水準ではあるが前月よりも落ち着いた。バンコク市内でも、小売・サービス価格の値上げが散見される。

タイ中央銀行(BOT)は3月30日の金融政策委員会において、2022年のインフレ率の見通しを4.9%と上方修正している(前回2021年12月時点では1.7%)。

東南アジアに迫るインフレの波

東南アジア各国の最新のインフレ率の状況をみると、おおむね前月から上昇がみられている(添付資料図参照)。2022年3月の上昇率では、フィリピンは4.0%、インドネシアは2.6%、ベトナムは2.4%だった(添付資料表参照)。シンガポールは2022年2月で4.3%上昇し、ラオスも同月は7.3%上昇とインフレが悪化した。ただし、マレーシア、インドネシア、ベトナムなどでは例年の水準を大幅に上回ってはいない。

アジア開発銀行(ADB)が4月6日に発表した「アジア開発見通し(ADO)」によると、2022年の東南アジア地域全体でのインフレ率は3.7%と予測されている。2020年(1.5%)や2021年(2.0%)に比べて、物価上昇が加速する見込みだ。ADBの2022年のインフレ率の予想では、ミャンマー(8.0%)、ラオス(5.8%)、カンボジア(4.7%)、フィリピン(4.2%)などで高水準となる見通し。ベトナム(3.8%)、インドネシア(3.6%)、タイ(3.3%)、シンガポール(3.0%)、マレーシア(3.0%)は3%台としている。

ただし、ADBは2021年12月時点での見通しと同様、東南アジアは新型コロナウイルスの影響下にあっても強靭(きょうじん)なサプライチェーンを堅持しており、供給網の混乱や寸断による物価への影響が少なく、世界的にみると物価上昇率は低めだ、とする見方を崩していない。また、新型コロナウイルス禍からの経済回復が十分でなく、各国で需要・消費が十分に戻っていないため、インフレ圧力が緩やかという側面もある。

(北見創)

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

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