中国の全人代常務委、「強制労働廃止条約」の批准を承認

(中国、EU)

国際経済課

2022年04月22日

中国の全国人民代表大会常務委員会は4月20日、ILOが採択した「強制労働条約」(1930年)と「強制労働廃止条約」(1957年)の批准を承認した。これを受け、ILOのガイ・ライダー事務局長は「中国が強制労働に関するこれら2つのILOの基本条約を批准することを歓迎する」と表明している。

中国が今回、批准することを決めた両条約は、ILOが「中核的労働基準」とする、強制労働と児童労働、差別、結社・団体交渉の4分野・8本の基本条約の一部を構成する。中国はこれまで4本の基本条約を批准しており、今回で計6本の基本条約を批准することになる(注)。

なお、両条約の批准は、EU・中国間の包括的投資協定(CAI)の交渉でも焦点の1つとなっている。CAIは2020年12月にEUと中国とで原則合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2021年1月5日記事参照)に至ったものの、その後、欧州議会では中国の「人権問題」を理由にCAI批准に関する審議を凍結中となっている。EU側が非公式文書として公開しているCAIのファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の冒頭で、「双方は、気候変動や強制労働の防止を含めた、高いレベルの環境および労働者の権利の保護を支持するかたちで投資を促進することに合意した」と記している。また、同第7項目には「特に強制労働に関するILOの基本条約の批准に向け、継続的に努力する」として具体的に言及している。

また、中国はミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官による新疆ウイグル自治区の視察を5月に受け入れ予定としており、人権をめぐる中国の一連の動きがEU側のCAI批准手続き再開に向けた糸口となるか注目される。

(注)ILO外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、中国がこれまでに批准した基本条約は「同一報酬条約(1951年)」「差別待遇(雇用および職業)条約(1958年)」「最低年齢条約(1973年)」「最悪の形態の児童労働条約(1999年)」の4本。

(森詩織)

(中国、EU)

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