バイデン米政権、オーストラリアEVバッテリーサプライヤーに1億ドル融資を承認、サプライチェーン強化のため

(米国、オーストラリア)

ニューヨーク発

2022年04月26日

米国エネルギー省の融資プログラム局(LPO)は4月18日、米電気自動車(EV)メーカーのテスラのサプライヤーであるオーストラリアの鉱物探査会社シラーテクノロジーズ(本社:メルボルン)に対し、最大1億700万ドルの融資を承認したことを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。融資は「先端技術車両製造(ATVM)ローンプログラム」の枠組みを通じたもので、米ルイジアナ州ビデーリアの同社施設でのリチウムイオン電池材料の生産拡張に向けた資金として利用される。バイデン政権はEVの早期普及と国防の観点から、バッテリーに使用される重要鉱物の国内供給とサプライチェーンの構築を目指しており、今回の融資もそのための政策の一環として位置づけられる。

ATVMローンプログラムは、ライトビークル(乗用車と小型トラック)と部品の低燃費化を支援するプログラムで、LPOが177億ドルの融資権限を持つ。これまでフォード、日産、テスラに対し、合計約80億ドルが融資されたが、2011年以降は利用されておらず、今回10年以上ぶりに活用されることとなる。

今回の融資は、リチウムイオン電池の負極材に利用されるグラファイト(黒鉛)の生産拡張に対するもの。シラーは2040年までにEV約250万台分のグラファイトを生産する計画で、そのほとんどは2021年12月に4年間の供給契約を結んだテスラに供給される予定だ。原材料の天然黒鉛は、同社の親会社が所有するモザンビークのバラマの鉱山から採掘したもので、原材料から生産まで同社による一括管理が行われており、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点からも評価されている。

グラファイトは、ジョー・バイデン大統領が3月31日に発表した、国防生産法に基づく重要鉱物の国内生産増に向けた取り組みを指示する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、リチウムやニッケルなどとともに、国内での供給源を確保すべき鉱物の1つに挙げられている(2022年4月5日記事参照)。エネルギー省によると、米国で現在使用するグラファイトの全てを輸入に頼っており、早期の対応が求められている。

(大原典子)

(米国、オーストラリア)

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