ボリッチ大統領不支持率が上昇、原因は政権の内外に

(チリ)

サンティアゴ発

2022年04月26日

チリの民間調査会社カデム(cadem)は4月18日付で最新の世論調査結果を公表した。それによると、回答者の50%がガブリエル・ボリッチ大統領への不支持を表明し、支持を上回った。3月11日に新政権が誕生して以降、カデムはこれまで5週にわたって同様の調査を実施しているが、大統領への不支持率が支持率を上回ったのは今回が初めて(添付資料表参照)。

回答者の内訳をみると、「18歳から34歳までの若年層」(支持53%、不支持41%)、「左派政党の支持者」(支持73%、不支持22%)、「大統領選でボリッチ氏に投票」(支持67%、不支持22%)などの一部の属性を除き、不支持が多数を占めた。カデムによると、大統領不支持が支持を上回るまでに要した期間は、セバスティアン・ピニェラ前政権下では就任から37週、2代前のミチェル・バチェレ政権下では就任から33週とされている。

もっとも、これらの数値のみで現政権を評価するのはフェアではないだろう。例えば、カデムの世論調査の中では、回答者の半数超が国内のインフレ進行を問題視しているが、インフレがロシアによるウクライナ侵攻などの国外情勢にも起因していることは明白だ。

しかし、「身から出たさび」と言える出来事もあった。イスキア・シチェス内務相による失言問題だ。内務相は4月6日の下院国民安全委員会で「前政権下では、不法入国者を航空便によって国外追放した後、同じ機体に彼らを乗せたまま再度チリへ入国させるという、ずさんな対応が行われていた」と発言した。直後にロドリゴ・デルガド前内務相がこの発言内容を事実無根とする声明を発表し、翌日にはシチェス内務相も自身の誤りを認め、関係者へ謝罪したものの、一部の議員からは解任要求の声も上がった。

大統領選への多大な貢献を果たしたシチェス氏が引き起こした騒動をめぐり、ボリッチ大統領はその火消しに追われることとなった。新たに政府が21の経済復旧政策(2022年4月13日記事参照)を発表した最中の出来事となった。

(佐藤竣平)

(チリ)

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