エスカス条約の第1回締約国会議が開催

(チリ、中南米)

サンティアゴ発

2022年04月27日

チリの首都サンティアゴにおいて4月20日から、国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の主催により、エスカス条約(Acuerdo de Escazú)の第1回締約国会議が開催された。同条約には、中南米およびカリブ海地域の環境問題に関連して、情報へのアクセスの確保、市民の参加促進、司法制度の強化、活動家の人権の保護などが規定されている。2018年にコスタリカで採択された後、2021年4月にメキシコやウルグアイを含む12カ国の批准によって発効した。

チリでは、新政権誕生直後の2022年3月18日に同条約への署名が行われたばかりで、国会で審議中のため批准手続きは未済となっている。会議の開催国政府の長、およびオブザーバー国としての立場を兼ねて、開会式典に参加したガブリエル・ボリッチ大統領は、同条約によって域内の国々が運命共同体として環境問題へ取り組む重要性について言及し、チリがその中心的な役割を担うとも発言した。

エスカス条約への署名は、ボリッチ大統領にとって一種の政治的なカードでもあった。同条約への参加については、前セバスティアン・ピニェラ政権下でも精力的に進められていた政治イシューだったが、2020年9月に突如として署名の拒否が表明されたことで、波紋を呼んだ。その理由として当時の政権は、条約が参加国に対して課す義務の規定に曖昧な箇所がある点や、環境関連の活動家のみを優遇する措置の偏向性などを例に挙げ、これらの内容によってチリの国益が損なわれる可能性を考慮し、署名を行わないと結論付けている。

ボリッチ大統領は選挙戦時から、これらの前政権の一連の対応を強く批判し、自らの公約として条約への署名を掲げ、大統領就任からわずか1週間でその実現に至ったことで、存在感を強めた。今後は国内での批准手続きの進行状況とともに、前政権が懸念していたような事項が顕在化する可能性についても注視する必要があるだろう。

(佐藤竣平)

(チリ、中南米)

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