元トップモデル、ファッション産業の盛り上げに意欲強く

(エチオピア)

アディスアベバ発

2022年04月15日

ジェトロは、日本でも十数回のファッションショーに参加した経験があるエチオピアの元スーパーモデル、アンナ・ゲタネ(Anna Getaneh)氏が設立した「アフリカン・モザイク(AFRICAN MOSAIQUE外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を再訪した(2019年7月5日記事参照)。首都アディスアベバ中心部から車で1時間ほどの郊外にあるオロミア州のデザインセンターには、新しい建屋がある。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行を境に始めた新たな取り組みを聞いた(3月1日)。

写真 アフリカン・モザイクの外観(ジェトロ撮影)

アフリカン・モザイクの外観(ジェトロ撮影)

写真 洗練された商品展示(ジェトロ撮影)

洗練された商品展示(ジェトロ撮影)

(問)ブランドコンセプトやビジネスに変化はあるか。

(答)ブランドコンセプトは不変で、エチオピアを中心にアフリカ各国の「その国らしさ」を取り入れたデザインだ。品目も衣服だけでなく、小物や革製品も扱っている。ファスナーなどの服飾資材はできるだけ国内で購入可能なものを使っているが、品質に不満もあるため、できるだけシンプルなデザインにしている。建屋内でファッションショーもできるが、新型コロナウイルス感染防止対策としてイベントは屋外に切り替えた。

(問)新たな取り組みは。

(答)アディスアベバ市内には引き続き実店舗もあるが、自社サイトで電子商取引を可能にした。国際クーリエを利用して発送する。エチオピアのデザインや商品を世界に向けて発信したいという思いも変わっておらず、インキュベーションプログラムも継続している。また、新しい建屋では、自社とは無関係な雑貨などのブランドに無料展示の機会を提供し、毎週土曜日にはフェアを実施している。商品が売れれば、若干の手数料をもらうが、利益を目指した活動ではない。

写真 他社にもスペースを開放(ジェトロ撮影)

他社にもスペースを開放(ジェトロ撮影)

(問)社会起業家的な側面が強くなっているのか。

(答)地元に貢献したい思いは強い。エチオピアの縫製産業は極端に言えば、道端で縫物をするミシン1台のテーラーか、工業団地入居企業のような大量生産のどちらかだ。デザインセンターでは、これまで行っている技能訓練にとどまらず、個人でそろえることができない多様な縫製機械を利用に供することを通じて、デザイナーとそのブランドを育てたい。エチオピアから幾つもブランドが育てば、ミシン1台のテーラーと大量生産の工場の中間に位置する雇用の受け皿にもなり、エコシステムが形成されていく。ひいては、ファッション産業全体が盛り上がる。国内には、バハルダール大学のように繊維・縫製分野の工学科やデザイン学科などもあるが、卒業生が学んだ技能を生かせないことも多い。政府や公的技能訓練機関、産業団体、企業、援助機関などはそれぞれ、繊維・縫製産業の育成や発展には熱心だが、有機的に連携しているとは言えない。今後は、産業界や公的機関など関係者に横串を通すための会議も呼びかけていきたい。日本からの参加も歓迎する。

写真 縫製機械がそろう作業場(ジェトロ撮影)

縫製機械がそろう作業場(ジェトロ撮影)

(関隆夫)

(エチオピア)

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