原子力発電の導入へ、ロシアや韓国、米国と協議中

(フィリピン)

マニラ発

2022年03月09日

フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は2月28日、同国のエネルギーミックスに原子力発電を導入する大統領令(Executive Order)第164号PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に署名を行った。同大統領令では、脱炭素に向けて石炭火力発電から電力調達が減少していく予想を踏まえ、石炭火力発電に代替するベースロード電源として原子力発電を位置付けている。

フィリピンでは、2040年までにエネルギー需要が毎年4.4%の成長率で増加していくことが見込まれており、同年までに追加的に68ギガワットの発電能力が必要と推計されている(政府通信社3月3日付)。フィリピンが増大するエネルギー需要に対応し、持続的な経済成長を実現する上で、原子力発電は安定的かつ安価であり、環境負荷の少ない電源だ、と同大統領令では説明している。

フィリピンには稼働が停止されているバターン原子力発電所があり、同発電所がフィリピンにて唯一の原子力発電所だ。同大統領令では、同発電所の再稼働を検討していくことも記載されている。また、同大統領令ではフィリピン国内に新たな原子力発電所を建設していくことも促すとしている。なお、1980年代には、バターン州に加え、カガヤン州、ケソン州、ネグロスオクシデンタル州、サンボアンガ・デル・ノルテ州、スールー州、プエルト・プリンセサ市、ジェネラル・サントス市が原子力発電所設置の有力地として挙げられていた。

フィリピンエネルギー省(DOE)は3月3日、小型モジュール炉(SMR、注)技術の導入について、現在、ロシアや韓国、米国と協議を行っていると明らかにした(政府通信社3月3日付)。

(注)SMRは、核分裂を起こす炉心やタービンに蒸気を送るシステムなどを、小型の発電モジュールに一体で納める。

(吉田暁彦、サントス・ガブリエル)

(フィリピン)

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