メキシコ製パン大手ビンボ、ロシアでの販売と新規投資を停止、ウクライナ危機はインフレと財政に悪影響

(メキシコ、ロシア、ウクライナ)

メキシコ発

2022年03月16日

世界33カ国206の生産拠点、300万の販売拠点、100を超えるブランドで1万3,000品目の製品を販売するメキシコの製パン大手ビンボ・グループは3月14日、現在の国際情勢と自社の価値観に伴い、ロシアでの販売、新規投資、広告活動を停止すると発表した(3月14日付同社プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ビンボはロシアの首都モスクワに製パン工場を有し、362人を雇用しているが、ロシアでの販売がグローバル収入に占める割合の0.5%にすぎず、経営への影響は小さい(3月15日付現地紙「レフォルマ」)。ウクライナでは2月24日から150人を雇用するドニプロ工場が操業停止に追い込まれている。(3月15日付現地紙「レフォルマ」)

ビンボ以外で同地域での操業を停止したメキシコ企業は、有力財閥アルファ・グループ傘下の自動車部品製造ネマック(同社3月4日付プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。同プレスリリースによると、ネマックにとってもロシアのオペレーションがグローバル収入に占める割合は1%程度で、大きな影響はないとしている。

インフレ高進と財政への悪影響がウクライナ危機による懸念材料

メキシコとロシア、ウクライナとの間の経済関係は他国と比して強くない。メキシコの2021年の輸出総額に占めるロシアの割合は0.1%、ウクライナは0.01%、輸入総額に占めるロシアの比率は0.4%、ウクライナは0.1%にすぎない。ただし、尿素を中心とする肥料は両国からの輸入依存度が高い。2021年のメキシコの尿素輸入に占めるロシア産のシェアは数量ベースで34.6%(約49万トン)を占め、ウクライナ産も2.0%(約3万トン)。HS31類の肥料全体でみても、ロシア産が32.5%(約98万トン)で最大の輸入相手国だ。同地域産肥料の輸入減少により、肥料の流通価格が上昇し、農作物の生産コストを上昇させ、高止まりしているメキシコのインフレ率にさらなる上昇圧力を生み出すことが懸念される。メキシコ13州に肥料を供給する輸入業者のアバステセドーラ・アグリセンターによると、尿素の販売価格は2月平均の1トン当たり800ドルから3月上旬には1,000ドルまで上昇している(3月15日付現地紙「レフォルマ」)。

メキシコの消費者物価上昇率は2月末時点で年率(前年同月比)7.28%と高止まりし、国際的な需給ギャップが影響してコアインフレ(注)も6.59%と上昇を続けている。非コアに分類される農畜産物のインフレも年率16.17%と高止まりしている。エネルギー・公共料金は同4.48%と、12月以降は減少傾向にあったが、3月は原油価格高騰が影響し、再び上昇するのが確実視されている(添付資料図参照)。中央銀行は政策金利を6回連続で引き上げてきているが、今後もインフレのコントロールに苦慮する見通しだ。

さらに懸念されるのが、財政への影響だ。政府はガソリン、ディーゼルの販売価格を抑えるため、燃料販売における生産サービス特別税(IEPS)の課税を原油価格の上昇に応じて減額あるいは免除している。昨今の原油価格上昇は、メキシコの当初予算案では盛り込まれていなかったため、2022年のIEPSの税収減は確実だ。2022年の経済成長率として政府は4.1%を見込むが、3月3日に中銀が発表した民間シンクタンクの見通し平均値は2.04%で、経済成長減速による所得税や付加価値税の減収も見込まれるため、税収の確保に向けた課題は大きい。

(注)天候などにより価格変動が大きい農産品やエネルギー価格、政府の方針で決定される公共料金を除いた価格の指数。

(中畑貴雄)

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