憲法裁判所、無効となっていたフジモリ元大統領の恩赦復活の判決を下す

(ペルー)

リマ発

2022年03月18日

ペルー憲法裁判所(TC)は3月17日、2018年に無効となっていた、アルベルト・フジモリ元大統領の人身保護令状に基づく恩赦による釈放決議(注1)を、回復する判決を下した。TCのプレスリリースによると、今回の審議では6人の判事(注2)のうち3人が賛成、残り3人が反対票を投じ、判決が割れたため、最終的に決定権を有するフェレーロ・コスタ首席判事が同決定票を行使して賛成判決を下した。なお、フジモリ元大統領の釈放時期について、「エル・コメルシオ」紙はTCスポークスパーソンからの情報として、判決書作成に1週間ほど時間を要するため、3月28日あたりになる可能性が高いとしている。

今回の判決に対して、ペドロ・カスティージョ大統領は自身のツイッターで、「国際的な司法機関とペルー政府は、国民のためにも今回の判決を阻止するべきだ」とコメント。また、アニーバル・トーレス首相もテレビの取材に対して、今回の判決に、個人的に反対の立場にあることを示した。一方、フジモリ元大統領の政治母体であるフエルサ・ポプラール(人民勢力:FP)党のルイス・ガラレタ幹事長は、自身のツイッターで「フジモリ元大統領の釈放は正義だ。彼はペルーのために尽力した人物で、これは合法的な判決だ」と評価した。一方、長女である、FP党のケイコ・フジモリ党首からの正式なコメントは出ていないが、3月14日にフジモリ元大統領が現在患っている肺線維症の検査のため、一時的に収監先から外出した旨を自身のツイッターで報告している。

今後は、被害者家族が再び米州人権裁判所(IACHR)の仲介を求めた上で、ペルー最高裁の介入を求める可能性があるほか、反フジモリ派による抗議デモの呼びかけも既になされており、混乱が予想される。

(注1)フジモリ元大統領は2010年、治安部隊を指揮して市民を殺害した殺人の罪などで禁錮25年の有罪判決が確定。その後、2017年12月24日に、当時のペドロ・パブロ・クチンスキー元大統領の大統領決議第281-2017-JUS号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによって釈放決議が公布されたが、被害者家族による訴えを受けたIACHRがペルー司法当局に対する恩赦の再考判決を下し、ペルー最高裁が2018年に恩赦を無効として再び収監していた。

(注2)本来、TCの判事は7人だが、任期中に1人が急逝。また、残り6人のうち5人が任期満了を過ぎているが、任命権を持つ議会が度重なる政治危機のため、採択に至っていない。

(設楽隆裕)

(ペルー)

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