工業分野で2024年にカーボンピークアウト達成を見込むとの研究も
(中国)
上海発
2022年03月07日
中国の環境分野の権威ある学術論文誌「環境科学研究」の2022年第35巻第2期で、電力や鉄鋼、環境関連の業界団体、研究機関が共同で、中国の重点産業(鉄鋼、セメント、アルミ精錬、石炭化学、石油化学、電力、交通、建設)の炭素排出ピークアウトに向けた研究結果を発表した。それによると、クリーンエネルギーの導入、エネルギー効率向上、資源循環、排出管理コントロールなどの措置を積極的に行うことで、中国が目標としている2030年より前にカーボンピークアウトの目標を達成可能としている。
研究結果では、ピーク時の炭素排出量は2020年比5億~7億トン程度の増加となり、ピークアウト後は3~4年程度、ピーク時と同程度の排出量の時期が続くとしている。産業別にみると、需給や技術の導入状況などによってピーク時は異なる。鉄鋼、セメント、アルミ精錬、石油化学、石炭化学の5分野を含む工業分野では、第14次5カ年規画期間中(2021~2025年)の2024年に炭素排出量のピークを迎え、その後、緩やかに減少していくという。また、電力や交通、建設分野の炭素排出は2030年前後にピークを迎える見込み(分野別詳細は添付資料表1参照)。
また、この研究では、ピークアウトに向け、クリーンエネルギーの導入やエネルギー効率向上、資源循環、排出管理コントロールといった4つの措置に関し、2035年までに34兆1,000億元(約614兆円、1元=約18円)が投じられると推計している。このうち2021~2030年は20兆8,000億元で、措置別の資金投入の内訳では、クリーンエネルギーが71.5%と最大だという(添付資料表2参照)。炭素排出削減については、これら4つの措置により排出ピーク時に19億3,000万トンの削減が見込まれ、中でも投資規模の大きいクリーンエネルギーの導入に伴う削減量は4措置全体の削減量の71%を占める。
また、同研究では、各産業のピークアウトに向けた取り組みの分析を踏まえ、6つの対策を提案した。
- 新しい電力システムの全面的構築
- 重点産業の生産能力コントロール管理強化
- 低炭素循環型工業システムの構築の加速化
- 工業分野の省エネとエネルギー消費削減の推進
- グリーンで低炭素な輸送方法形成の加速化
- 建設部門のエネルギー効率向上とエネルギー消費構造最適化の同時開発
(高橋大輔)
(中国)
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