懸念されるウクライナ情勢のアルゼンチンへの影響

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年03月24日

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって生じているエネルギー価格の高騰や、物流の混乱、ロシア金融機関の国際銀行間通信協会(SWIFT)からの排除、通貨ルーブルの下落、穀物価格の上昇といった動きは、アルゼンチンにも影響を及ぼすとみられ、既に影響が出ているものもある。3月6日付の現地紙「エル・クロニスタ」電子版が報じた。

同紙によると、在アルゼンチンの海上輸送会社は、ロシアの港に向けた貨物の仕向け地を変更しており、これによる追加費用の発生や貨物が中継地にとめ置かれることが懸念される。航空輸送も同様で、同紙によると、国際宅配便の停止に伴って船荷証券や航空運送状の輸送ができず、ロシアでの貨物引き取りに支障が生じる可能性や、出荷済み貨物の滞留による保管費用が発生する可能性も指摘されている。

エネルギー価格の高騰については、国内財政の悪化と外貨準備高の減少につながる恐れがある。アルゼンチンは天然ガスの産出国ではあるものの、特に冬季は隣国ボリビアからパイプラインで安価に輸入する天然ガスに依存している。しかし、2022年はボリビア産天然ガスの生産量が減少するとの見通しで、液化天然ガス(LNG)の輸入を増やさなければならない。LNGの国際価格の上昇は、燃料補助金の増加による財政の悪化や輸入増による中央銀行の外貨準備高の減少につながる可能性がある。

同紙によると、ロシア金融機関のSWIFTからの排除による影響は既に生じているようだ。ロシア側の輸入者がアルゼンチンの輸出者に支払いができず、商品を出荷してしまったアルゼンチン側の輸出者が代金を回収できない事態が生じていると報じられている。

ロシア通貨ルーブル下落は、ロシアの輸入者による契約不履行が発生する可能性と、ルーブル建ての売買契約に基づいて輸出をしているアルゼンチンの輸出者が損失を被る恐れが生じている。

グローバル・トレード・アトラスによると、2021年のアルゼンチンの対ロシア貿易額は、輸入額全体の1.03%、輸出額の0.87%にとどまるため貿易全体への影響は限定的だが、世界的にロシアの輸出シェアが大きい産品、例えば、肥料はアルゼンチンにも多く輸入されているため影響が懸念される(添付資料表参照)。輸出については、乳製品や果実のロシア向けのシェアが大きい。

穀物価格上昇は、穀物の輸出国であるアルゼンチンにとってはプラスだ。しかし、価格上昇期待から、生産者の中に売り渋りの動きがあるとも言われており、アルゼンチン産穀物の輸入国にとってはマイナスだ。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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