英国、ロシア念頭に不正資金の取り締まり強化案を発表

(英国、ウクライナ、ロシア)

ロンドン発

2022年03月03日

英国政府は2月28日、英国における不正な資金や、汚職にかかわるエリート層を取り締まることを目的とした「経済犯罪(透明性と執行)法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表した(2月28日付英国政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ロシアによるウクライナへの軍事行動も踏まえ、同法案は3月1日に英国議会に提出された。同法案は英国資産を通じた外国所有者による資金洗浄を国家犯罪対策庁が防止するのに役立つ。また、より多くの汚職に関わる新興財閥(オリガルヒ)に対し、不明財産に関する命令(Unexplained Wealth Order、UWO、注)を課すことを確実にする。

同法案を通じ、新たな登録制度「外国事業者登録」を創設予定。この制度により、英国に財産を所有する匿名の外国人に身元開示を義務付け、犯罪者がペーパーカンパニーを利用して身元を隠すことを防ぐ。さらに、政府は同制度のファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、同制度が英国財産を資金洗浄の手段として利用している者を法執行機関が追跡する際にも役立つとしている。登録義務の違反に対しては、1日最大500ポンド(約7万7,500円、1ポンド=約155円)の罰金、また深刻な違反の場合は最長5年の実刑を科す。また、UWOを受けて提供された資料につき法執行機関が確認を行うことができる時間を増やすなど、UWOについても改革を実施予定。このほか、金融制裁執行局(OFIS)が多額の罰金を科すことを容易にする制度変更なども行う。

そのほか、政府は同日、英国の企業登記局の改善計画を示した「企業の透明性および登録改革白書」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表。英国で会社を設立、経営、所有、管理する者に対する同局を通じた身分証明の要求や、疑わしい情報に対する異議申し立てや治安当局へ通報する権限の同局への付与、外国の代行会社が外国人犯罪者などの代理で英国で会社を設立することの禁止などを改革策として挙げた。

今回の法案について、プリティ・パテル内相は、ロシアのプーチン大統領に近しい者たちが英国に不正資金を隠すことはもうできないとし、新法案に期待を寄せた。また、クワシ・クワルテング・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相も「新たな登録制度は、誰が英国に何を所有しているかを明らかにする」として、不法に取得した富を隠すため英国の財産を利用するオリガルヒや犯罪者などを暴くことができるとした。

(注)財産が犯罪行為を通じて得られたことを証明しなくても、差し押さえを可能にする命令。

(オステンドルフ・七海・ありさ)

(英国、ウクライナ、ロシア)

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