東南アジアでも進む物価上昇、タイは13年ぶりの高水準に

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

バンコク発

2022年03月08日

タイ商務省は3月4日、消費者物価指数(CPI)の2月の上昇率(前年同月比)が5.3%だったと公表した(添付資料表参照)。5%台を超えたのは2008年9月(6.1%)以来で、約13年ぶりの高水準だ。品目別では、エネルギーが29.2%増と急騰しており、家庭の電気・燃料・水道は28.2%増、車両・車両運用は14.1%増と2桁増となった。国際的な原油価格の上昇などが要因とみられる。また、食料・飲料も4.5%増と上昇しており、中でも肉類は17.1%増と大幅増となった。アフリカ豚熱による豚肉価格の高騰が影響した。

東南アジアに迫るインフレの波

欧州や米国では、2021年中から物価上昇が問題となっていたが、インフレの波は東南アジアにも迫っている(添付資料図参照)。2021年12月、2022年1月のシンガポールのCPI上昇率(前年同月比)は4.0%と、従前と比べて高水準となっている。2021年中はインフレが落ち着いたように見えたラオスでも、2022年2月には6.3%と2年ぶりの高水準となった。他方、2022年1~2月のインフレ率では、ベトナムは1%台、マレーシアやインドネシアは2%台、フィリピンは3%台と、これら4カ国では、直近年と比べて大幅な物価上昇が確認できない。

アジア開発銀行(ADB)が2021年12月に発表した「アジア開発見通し(ADO)」によると、米国や欧州ではサプライチェーンの混乱が要因でインフレ率を押し上げたが、アジアでは供給網の混乱や寸断が少なかったため、2021年の物価上昇が小さかったと分析している。また、2022年の見通しとしては、インフレ圧力はあるものの、引き続き穏やかだろうと予想していた。しかし、2月末に勃発したウクライナ危機により、国際的なエネルギー価格はさらに上昇しており、今後、ASEAN各国でも物価が上がる可能性がある。

ジェトロが2021年12月に発表した「2021年度海外進出日系企業実態調査アジア・オセアニア編」によると、アジア大洋州地域に進出する日系製造業の経営上の問題点として最も回答割合が高いのは「従業員の賃金上昇」(71.1%)、2番目が「調達コストの上昇」(63.3%)だった。物価・コスト増が日系企業の業績回復に水を差す恐れもある。

(北見創)

(ASEAN、シンガポール、ベトナム、タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ラオス)

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