新型コロナ禍での待機経て介護分野のインド人技能実習生が日本へ

(インド、日本)

ベンガルール発

2022年03月28日

インドのベンガルールに拠点を置く日系人材育成・研修サービス業のナビス・ヒューマン・リソーシズは3月10日、同社が育成した介護分野の技能実習生15人を、約2年間の新型コロナウイルス禍による入国制限に伴うインドでの待機を経て、日本へ送り出したことを発表した。

写真 3月11日に成田空港に到着した技能実習生(ナビス提供)

3月11日に成田空港に到着した技能実習生(ナビス提供)

ナビスは2002年に設立され、在インド日系企業向けに日本語研修などを提供してきた。現在は主に技能実習・特定技能制度による介護、宿泊業(ホテル・旅館)、農業のインド人材を育成し、日本へ紹介する事業を手掛けている。日本語の授業は全て日本語講師資格を持つ日本人講師が行っており、日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるN3レベルへの到達スピードの速さ「5カ月程度」を強みとしている。

また、介護の質を確保すべく、全ての人材をインドでの看護師資格を持つ候補者から選定している。日本の介護現場特有の表現や、平易で優しい言葉遣いも教えることで、日本の現場を想定した、より実践的な研修を実施している。同社はインド国家技能開発公社(NSDC)認定送り出し機関として、2019年3月から合計46人の技能実習生を、また2020年10月には特定技能制度に基づいてインド初の3人の特定技能人材を、いずれも介護分野で日本に紹介してきた。

鴛渕(おしぶち)貴子最高経営責任者(CEO)によると(3月15日取材)、「介護人材の不足は先進国のみならず、世界全体で共通の課題」であり、入国制限が続いていたこの2年間は日本以外の国へ人材が流出してしまうのではないかという危機感を募らせていた。また、研修を終えて日本への渡航を待っている人材のモチベーションや日本語レベルの維持など、新型コロナ禍に特有の壁に直面していたという。

日本は高齢化が進み、介護の担い手確保がますます重要になる一方で、インドの介護人材は日本で実習・就労することで技術的な学びや収入が得られ、まさにウィンウィンな関係だと鴛渕CEOは語る。インドには家族を大切にする文化があり、大家族の家庭で育つ人も多いため、高齢者の世話が得意な人材が多い。また、インド人は出身地の言語はもちろん、公用語のヒンディー語、英語など複数の言語を覚えるため、新たな言語を習得することへの抵抗感は強くなく、インド人ならではの強みだ。日本側でインド人材を活用する受け入れ施設を増やすためのPR活動や、インド側で日本での就労のメリットをさらに周知することなど、取り組むべきことはまだ多くあるが、「日本とインド両国の今後の発展のためにこれからも尽力したい」と意気込みを見せている。

(倉谷咲輝)

(インド、日本)

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