タイ、燃料価格の高騰による消費者物価上昇に警戒

(タイ、ウクライナ、ロシア)

バンコク発

2022年03月01日

タイ外務省は2月24日、ウクライナ情勢にかかるタイ政府としての声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同声明では、「タイはウクライナの動向、特に欧州における緊張の高まりについて、深い懸念を持って見守っている」「対話を通じて事態の平和的解決を見いだすための、継続的な努力を支持する」とした。

タイ外務省によれば、ウクライナには、現在250人のタイ人が在住しており、同省は退避計画を進めている。同省が2月23日に明らかにしたところでは、ウクライナ西部のリビウ(キエフから800キロ)に退避拠点を設ける。また、チャーター機などでタイやポーランドへの退避を勧める。

タイ商務省によると、2021年のタイの対ロシア貿易総額は前年比14.6%増の881億6,732万バーツで、タイの貿易額全体の0.52%のシェアを占めている。また対ウクライナ貿易総額は28.7%増の124億2,842万バーツ(約434億9,947万円、1バーツ=約3.5円)で、0.07%のシェアとなっている。貿易額に占める両国のシェアは高くないが、ウクライナ情勢がタイ経済へ与える影響について、官民の代表らは、以下のように懸念を示している。

例えば、アーコム・タームピッタヤーパイシット財務相は2月22日、ロシアとウクライナの緊張の高まりにより、世界的に石油やエネルギー価格が影響を受ける可能性があり、タイも同様に影響が及ぶとの認識を示した。その上で、タイにおける交通セクターや生活必需品の価格への影響を抑える必要があると述べた(「ネーション」2022年2月23日)。

タイ工業連盟(FTI)も同日、「世界の指導者がロシアによるウクライナへの軍事行動を阻止できなければ、タイは石油価格上昇に苦しむことになり、ビジネス機会を失うことになる」と声明を発表した。FTIのクリエンクライ・ティエンクン副会長(タイ‐ロシア・ビジネス協議会議長)によると、国際社会からロシアに対する制裁が科されれば、世界の石油・ガス価格は急騰するという見方を示した。同副会長によれば、タイは国内で使用する石油の約80%を輸入しており、石油価格上昇の影響は避けられない。タイ政府は、2月15日の閣議で、軽油の物品税率の引き下げを決定。軽油の小売価格は、1リットル当たり2~3バーツ下がったが、今回のウクライナ情勢の緊迫化により、タイ政府のさらなる措置が必要となる可能性もある(「ネーション」2022年2月22日)。タイ商工会議所(TCC)のサナン・アンボンクン会長も「消費者の生活費を上げないためにも、政府が軽油価格や物価上昇を可能な限り抑えるべきだ」という見方を示した。

しかし、タイ商務省貿易政策・戦略局のロナロン・プーンピパット局長は、石油価格の高騰が2022年中は続くと予想している。この点、タイで小口配送業を営むベスト・ロジスティクス・テクノロジーは、高騰する燃料費を節約するため、一部地域において、電気自動車(EV)の使用を開始した(「バンコク・ポスト」紙2022年2月22日)

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ、ウクライナ、ロシア)

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