ペルーでウクライナからの鉄鋼関連製品の供給不安への懸念高まる

(ペルー、ウクライナ)

リマ発

2022年03月16日

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、ペルー経済に対して、燃料コストの上昇や為替変動によるインフレのほか、両国との通商関係など多面的な影響を及ぼす可能性がある。これを受けて、通商観光省(MINCETUR)とペルー貿易観光促進庁(Promperú)は3月9日、両国との貿易で影響を受ける企業へ情報提供をするウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開設した。

MINCETURの統計によると、2021年のペルーとウクライナの貿易総額は過去最高の1億4,770万ドルを記録し、両国の貿易収支は1億3,056万ドルのペルー側の貿易赤字となっている(添付資料「表1 ペルーの対ウクライナ輸入統計」、「表2 ペルーの対ウクライナ輸出統計」参照)。2021年にウクライナからペルーへは310品目が輸入され、輸入額は前年比85%増の1億3,913万ドルに上る。そのうち92%は鉄鋼関連製品が占めている。その中でも近年は特に鉄鋼製品製造の中間財であるビレットや銑鉄の輸入が急速に増加しており(注1)、ウクライナはこれらの主要供給元となっている。2021年のウクライナからの同品目の輸入額は前年比42%増の8,920万ドル(総輸入額の64%)を記録しており、同品目の総輸入額の34%を占めている(ロシアは11%)。MINCETURのアナ・ベラ・ガノサ通商研究調査部長は同省の臨時ウェビナーで、今後ウクライナやロシアからの供給が滞った場合は、その他の供給国であるトルコ(総輸入額の31%)、ブラジル(14%)、オマーン(11%)からの代替輸入の可能性が高まると分析している。

輸出面では、MINCETURによると、2021年には45社がペルーからウクライナへの輸出を行っており、輸出額は前年比76%増の857万ドルに上っている。45社中21社が農産品、13社が魚介類、6社が化学品、3社が金属製品を輸出している。輸出額の60%を占める魚介類は、主にオオイカ(前年比89%増の252万ドル、総輸出額の29%)、マス(2.2倍の191万ドル、22%)、魚卵〔43万ドル(注2)、5%〕を中心に輸出を伸ばしてきた。次ぐ農産物は総輸出額の25%を占め、主にブラジルナッツ(2.2倍の54万ドル、6%)、ショウガ(72%増の49万ドル、6%)、アボカド(2.8倍の30万ドル、4%)などが輸出されている。

ロシアとウクライナはいずれも、ペルーの貿易取引先ランキングではそれぞれ上位国ではないが(注3)、「新型コロナ禍」の中でペルー経済の牽引役となってきた農産業や漁業の輸出ビジネスにとっては、中長期的に大きな可能性を秘めた市場だけに、今回の紛争の影響を危惧する声は少なくはない。

ペルーの対ロシア貿易への影響については2022年3月16日記事参照。

(注1)2019年まではブラジルが主要供給国だったが、2020年の新型コロナウイルスのパンデミック以降はウクライナとトルコが台頭してきた。

(注2)魚卵は2020年まではウクライナ向けの輸出実績はない。

(注3)ペルーの輸出相手国としてロシアは27位、ウクライナ69位。輸入相手国としてはロシア18位、ウクライナ33位となっている(出所:税務監督庁)。

(設楽隆裕)

(ペルー、ウクライナ)

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