オルバーン首相、ハンガリー経済の5つの課題指摘
(ハンガリー)
ブダペスト発
2022年03月03日
ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相は2月19日、ハンガリー商工会議所の年初会合で、ハンガリー経済が直面する課題を指摘した。成長路線を維持するには政府は5つの「経済的な罠(わな、チャレンジ)」克服が必要とした。5つのチャレンジは以下のとおり。
1.ハンガリーで操業している企業の外資系比率の高さ
銀行、メディア、エネルギー分野の企業の売り上げをみると、ハンガリー系企業によるものが50%以上で、ここ10年間で大きな進展があった。一方、保険や通信、建設分野、食品小売り分野では、ハンガリー系企業の成長はまだ十分ではない。首相は競争力の維持や雇用確保、新しい技術導入の点から外資の必要性を認めながらも、「反外資政策を追求するのは正しいやり方ではないが、ハンガリーの資本比率を高める必要がある」と付け加えた。
2.ハンガリーの輸出は外資系大企業が大半で、輸出できるハンガリー系中小企業の数と質が不十分
2010年には自社の製品やサービスを輸出できる国内企業は2,000社だけだったが、現在は1万2,000社に増えた。しかし、輸出売上高をみると、その80%は外資系企業によるもので、ハンガリー系企業による輸出売上高は20%にとどまる。国内企業の輸出への貢献度を30%にまで高めることが政府の目標とした。また、ハンガリー企業は欧米よりも収益性の高い市場も考えた方がいいとし、バルカン半島や中国市場への進出を示唆した。
3.利益収支の赤字
国外進出したハンガリー系企業による入金額より多い。この課題を克服するには、国内で利益を上げられるハンガリー系企業が国外へ一層進出する必要があり、政府がそれを支えなければならない。
4.生産性の格差
国内の外資系企業の生産性はハンガリー系企業より高い。ハンガリー系企業ではデジタル化と自動化が求められており、政府はハンガリー系中小企業の先進的なデジタルソリューション導入支援の用意がある。また現在、GDPの1.6%にとどまっている研究開発費の増加も必要と述べた。
5.地方の発展の遅れ
首都ブダペストは過去10年間で大きく発展したが、地方は進んでいない。政府はEUの「多年度財政枠組み(MFF)」で、2021~2027年の7年間で4兆2,650億フォリント(約1兆4,501億円、1フォリント=約0.34円)を地方の開発に支出する。
また、ハンガリーが地理的な優位性を生かした経済活動、特に東アジアから西欧に向かう物資をハンガリー経由にすることの重要性を強調した。現在、人口1人当たりの高速道路の長さはV4(ビシェグラード4カ国:スロバキア、チェコ、ハンガリー、ポーランド)の中でハンガリーが最長だが、鉄道や航空網の整備も必要と述べた。
(バラジ・ラウラ)
(ハンガリー)
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