新型コロナ関連の2020年1月~2021年9月の特許出願は5,200件超、中国と米国で活発

(世界)

国際経済課

2022年03月31日

世界知的所有権機関(WIPO)は3月10日、2020年1月~2021年9月の21カ月間に、新型コロナウイルス感染症の治療薬やワクチンなどの開発に関連した特許出願が世界の49の特許機関で5,293件公開されたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注)。うち、治療薬の特許出願が1,465件、ワクチンの特許出願が417件だった。2003~2007年の重症急性呼吸器症候群(SARS)関連の特許出願が1,000件弱で、過去の事例と比較しても類をみないほど、感染症分野の特許出願が活発化したことを示した。

新型コロナワクチンの特許出願人を組織別にみると、企業が全体の49%、大学・研究機関が44%、無所属の開発者が7%を占めた。大学・研究機関による出願が2021年の国際特許出願全体に占める割合は8%に限られた一方で、新型コロナワクチン分野では特に大きな役割を果たしている。出願人の国・地域としては、多い順に中国(276件)、米国(72件)、ロシア(21件)、英国(9件)だった。

特許出願されたワクチンの種類は、組み換えタンパク質ワクチンやVLPワクチンなど、病原ウイルスそのものを不活化・弱毒化して用いる「従来型」のワクチンから、病原ウイルスのウイルス様粒子(VLP)や遺伝子情報の一部を用いる「新型」ワクチン〔DNAワクチンやメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンなど〕まで幅広い対象に及んだ。「従来型」の組み換えタンパク質ワクチンが出願件数全体の46%を占めて最も多く、「新型」のウイルスベクターワクチンは23%、mRNAワクチンは12%にとどまる。ただし、臨床試験の件数では、mRNAワクチンが占める割合は20%を占めるなど「新型」ワクチンの勢いが増していることが分かり、「新型」ワクチンの特許取得の動きも今後増えると予想される。

新型コロナウイルス感染症の治療薬に関する出願人の上位国・地域は、中国(887件)、米国(292件)、インド(60件)、韓国(35件)、ロシア(26件)、英国(22件)だった。

新型コロナウイルス関連の特許について、出願から出願公開までの所要期間は平均18カ月と、化学・バイオ分野全般の平均所要期間と比べて7~30%、日数が短かった。世界各地で新型コロナワクチン・治療薬の研究開発や承認が急ピッチで行われる中、それに関連した特許手続きも通常より加速して実施された。

WIPO事務局長のダレン・タン氏は「パンデミックは世界の科学界をかつてないほど動員した」と説明した上で、「われわれが直面しているグローバルな課題への取り組みを進展させるためには、組織、機関、部門、国境を越えた協力が不可欠だ」とコメントした。

(注)WIPOおよび各国・地域の特許機関で、2021年9月末までに公開された出願に基づく値。特許出願からその公開までには18カ月間のタイムラグが生じるため、WIPOは「パンデミック初期」の特許出願状況として発表している。

(森詩織)

(世界)

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