欧州の自動車と電力関連5団体、脱炭素化へEUの政治主導と財政支援求める

(EU)

ブリュッセル発

2022年03月22日

欧州の自動車と電力関連の5団体(注1)は3月18日、電気自動車(EV)用の充電と水素燃料の充填(じゅうてん)インフラ整備について、EUに対する共同政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(ACEAプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。5団体は道路輸送部門の脱炭素化に向けて、発電と送電のゼロ炭素化や低炭素化、スマートグリッド、車両の電動化などに取り組んでいるが、関連政策でゼロエミッションと炭素中立ソリューションへの投資に向けて最適な条件を整えるなど、公的部門の後押しが必要だと主張。さまざまな補完的な政策手段の活用や、2021年に欧州委員会が提案して現在、欧州議会やEU理事会(閣僚理事会)で審議している「欧州グリーン・ディール」関連の規則・指令案(2021年7月15日記事参照12月16日記事参照、注2)の間に一貫性を持たせることを求めた。

5団体は充電・充填設備へ投資をさらに増やす必要があるとし、乗用車やバンだけでなく、現時点で全く足りない状態にある重量車用のインフラ整備も必要だと訴えた。また、代替燃料インフラ規則案(2021年7月発表)や、非居住用建物への充電設備の設置要件を盛り込んだ建物のエネルギー性能指令の改正案(2021年12月発表、2021年12月17日記事参照)で、欧州委が掲げた目標設置数を大幅に超える整備が必要だと指摘した。

それには多額の初期投資が必要となるが、5団体は第5世代移動通信システム(5G)整備といった他のインフラ整備関連投資と比較すると規模が小さいと不満を示した。また、充電・充填インフラは長期的に商業的に可能なかたちで整備、運用することが必要だと指摘。特に、初期は収益性が低いと見込まれることから、EUの全加盟国で最低限のインフラを急速に確実に整備するには、公的支援、財政的なインセンティブ、法的拘束力のある設置目標数の設定などが必要だと訴えた。

充電設備での再生可能エネルギー活用促進に向けた支援など提言

また、5団体はEUに対する提言で、運輸部門でのゼロエミッション電力活用促進に向けたインセンティブの提供や、再生可能エネルギー生産に係る認可の迅速化、充電設備での再生可能エネルギー活用への支援を挙げた。そのほか、インフラ整備関連政策と円滑な電力供給やスマートグリッドの整備促進関連の政策との間に一貫性を持たせることや、十分な数の充電・充填基の整備とEU全域をカバーするEV充電ローミングを保証する消費者中心型の政策を実現し、充電設備の運営事業者が消費者に影響を与えることなく、ローミングに係る契約先の変更ができるようにすることも求めた。

5団体は提言書の結尾で、欧州が気候目標を達成するためには、業界の垣根を超えた投資だけでなく、公的部門による強力な政治的コミットメントが必要とし、欧州議会とEU理事会に対して、運輸部門の脱炭素化を支える確固とした調整が取れた政策の実現を求めた。

(注1)欧州自動車工業会(ACEA)、欧州自動車部品工業会(CLEPA)、風力発電産業団体のウインド・ヨーロッパ、欧州電気事業者連盟(EURELECTRIC)、EV用充電インフラ産業団体のチャージアップ・ヨーロッパの5団体。

(注2)ジェトロ調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向(全4回報告)」(2021年12月)を参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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