全国一体のコンピューティングネットワーク発展計画「東数西算」プロジェクトが本格始動

(中国)

北京発

2022年03月02日

中国の国家発展改革委員会などは2月16日、京津冀エリア(北京市、天津市、河北省)、長江デルタエリア(上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)、広東・香港・マカオグレーターベイエリア(広東省の一部都市、香港、マカオ)、成渝エリア(四川省、重慶市)の各地域について、「全国一体化コンピューティングネットワーク国家ハブ・ノード建設」を認める通知をそれぞれ発表した。2021年12月には、甘粛省、貴州省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区に対しても同様の通知が発表されていた。国家発展改革委員会によれば、今回の通知により「東数西算」(注1)プロジェクトが本格的に始動することになる。

同委員会によれば、「東数西算」プロジェクトは、データセンター、クラウドコンピューティング、ビッグデータが一体となった新たなコンピューティングネットワークの構築により、東部地区(注2)のデータ処理業務を西部地区へ移転し、データセンターの配置を最適化することで、両地区の連携を促進するもの。

当面の計画として、上記8地域・省区のハブ・ノードに10カ所のデータセンターのクラスターを形成する。データ処理の規模を拡大し処理効率を高めるとともに、川上から川下までの関連産業の発展を目指す。

地域別では、土地や再生可能エネルギーなどに強みを持つ西部地区に、データのバックグラウンド処理、オフライン分析、バックアップといった業務を東部地区から移転する。東部地区では、産業用インターネット、金融・証券、災害予報、遠隔医療、オンラインビデオ通話、人工知能処理など通信速度が重要となる業務を発展させる。

今後は、ハブ・ノード間のデータネットワーク強化や再生可能エネルギーを利用した電力の活用、イノベーションの促進のほか、産業エコシステムを育成し、西部地区ではデータ加工やデータクレンジング(注3)などの労働集約的産業の発展を支援する。

既に、テンセント、ファーウェイ、アリババなどが今回の通知の対象となる地域でデータセンターを運営しているほか(「澎湃新聞」2月20日)、中国の大手通信事業者の中国聯通も同計画への協力を発表している。

中国電子省エネ技術協会データセンター省エネ技術委員会の呂天文秘書長は、「東数西算」プロジェクトが「東部地区と西部地区のそれぞれの優位性を持つ業務を融合し、データセンターの機能配置に関する課題を完全に解決することができる」とした(「中広網」2月22日)。同時に、「西部地区は電力、水資源に恵まれており、交通も発展しているが、データ通信帯域幅の狭さと関連人材不足は一刻も早く解決すべき課題だ」としている(同上)。

(注1)「数」はデータ、「算」はデータ処理能力を指す。「南水北調」(南部の水を北部に送る)、「西電東送」(西部の電気を東部に送る)、「西気東輸」(西部の天然ガスを東部に送る)など、これまでに実施された国内に偏在する資源を全国に供給するための国家プロジェクトに並ぶものとされている。

(注2)地理上では、京津冀エリア、長江デルタエリア、広東・香港・マカオグレーターベイエリアが東部地区、成渝エリア、甘粛省、貴州省、寧夏回族自治区、内モンゴル自治区が西部地区となる。成渝エリアについては西部地区となるが、東部地区の各エリアと同様に市場、技術、人材、資金などの優位性の発揮が求められている。

(注3)破損したデータや表記の揺れなどを修正し、データの整合性や質を高めること。

(河野円洋)

(中国)

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