ウクライナ情勢がドイツ化学産業にも影響

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

ミュンヘン発

2022年03月25日

ドイツ化学工業会(VCI)は3月17日、ウクライナ情勢を受けて、既に公表していた2022年の化学・医薬品産業の生産・売上高見通しを取り下げると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。VCIは2021年12月、化学・医薬品産業の2022年の生産高見通しを前年比2.0%増、売上高見通しを前年比5.0%増と発表していた。VCIは現況下で見通しを示しても多分に推測の域を出ないとし、新たな見通しは示さなかった。

また、VCIは今回の見通し発表のために実施したウクライナ情勢を受けた会員企業向け緊急アンケート結果を公表した。アンケートでは、会員企業の54%が「2022年の生産高・売上高が減少する」と回答した。ロシアによるウクライナ侵攻前は、回答企業の約半数が2022年の売上高が増加すると見込んでいた。

「エネルギー価格の高騰が自社ビジネスに大きな問題となる」とした企業は約7割に上った。2022年2月下旬のアンケートでこの回答を選択した企業は約6割だった。VCIによると、ウクライナ侵攻後、ガス価格は7割以上上昇し、1メガワット時(MWh)当たり150ユーロを超えた。2022年1月は1MWh約80ユーロだったという。

「生産・調達コストの増加を全く、または一部しか製品価格に転嫁できない」と回答した企業は85%に上った。サプライチェーン・物流の課題や原材料不足について、2月下旬のアンケートでは回答企業の約6割が「原材料不足で大きな影響を受けている」と回答したのに対し、今回のアンケートでは8割がこの回答を選択した。

VCIは、ロシアからの天然ガス輸入が停止した場合、農業、自動車、化粧品、衛生用品、建材など化学・医薬品産業のほぼ全ての分野に影響を及ぼすとした。ドイツの化学・医薬品産業は原料として天然ガスを年間280万トン使用(全消費量の27%)、ボイラーや発電用として天然ガスを年間99.3テラワット時利用しているという。

ドイツの化学・医薬品産業の2021年のロシア、ウクライナへの輸出は全体の約3%の68億ユーロ。同産業の両国への直接投資額は対外直接投資全体の約2%で、ウクライナ侵攻前は現地で約70社が2万人を雇用していたという。VCIは化学・医薬品関連会員企業約1,900社を擁し、会員企業の売上高はドイツの化学・医薬品分野全体〔2,200億ユーロ(2021年)〕の9割以上を占める。ドイツの化学・医薬品産業の国内従業員数は53万人以上に上る。

(高塚一)

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

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