債務再編交渉でIMFとスタッフレベルで合意
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2022年03月07日
アルゼンチン経済省とIMFは3月3日、期間30カ月で450億ドルの拡大信用供与措置(EFF)によりアルゼンチンを支援する経済政策プログラムについて、スタッフレベルの合意に達したと発表した。
同省によると、IMFは四半期ごとに経済政策プログラムの状況をレビューする。最初の融資の払い込みはIMF理事会の承認後に、残りは四半期ごとのレビュー後に行われ、返済期間はそれぞれ10年。4年半の猶予期間があるため、返済は2026年から2034年の期間に行われる。
今後、今回の合意内容をアルゼンチン国会で承認し、その後にIMF理事会が承認して最終合意となる。アルゼンチンの外貨準備高が払底しているため、IMFへの次の債務返済日である3月22日までに最終合意に達しなければ、支払い困難な状態に陥り、デフォルトするとみられる。政府は3月4日に法案を国会に提出したが、与党内には急進派を中心にIMFとの合意内容に反対している勢力もあることから、今後の国会審議の行方に注目が集まる。
アルゼンチン経済省の発表からは、歳出削減に強く反対する与党・急進派や低所得層への配慮がにじみ出ている。まず、重要課題の物価の安定を定着させるためには包括的なアプローチが重要で、政策の自律性を高めることになる「外貨準備高の積み上げが必要条件」とした。その他、為替レートの安定、中央銀行による財政ファイナンスの段階的縮小、財政赤字の削減、自国通貨ペソの実質金利プラスを目指す金融政策に加え、価格統制や賃上げを行うことで、物価の安定と実質所得の改善を図る。
財政赤字の削減については、基礎的財政収支の赤字を2022年はGDP比2.5%、2023年は同1.9%、2024年は同0.9%とする。社会支援への支出を確保しつつ歳入を増やすバランスの取れた財政政策を目指すとしており、年金改革も予見していない。焦点となっているガスや電気料金への補助金は、住宅用については所得に応じて補助金を細分化し、高所得者を補助金の対象から除外する。非住宅用も大口需要家を補助金の対象から除外する。同時に、天然ガスや再生可能エネルギーの生産拡大、省エネの推進など中期的なエネルギー計画を策定するとした。
IMFは、今年の物価上昇率を38~48%、その後は年間5ポイントずつ低下すると予測している。2022年の物価上昇率のレンジが広いのは、インフレ期待の抑制が困難なためとしている。基礎的財政収支は2025年に均衡、資本取引規制は時間をかけて規制を緩和する道が開くことを期待するとした。
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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