中銀が政策金利を0.5ポイント引き上げ6.5%に

(メキシコ)

メキシコ発

2022年03月28日

メキシコ中央銀行は3月24日、政策金利を6.5%とすることを発表した。5人の理事全員が一致して0.5ポイントの引き上げを支持した。世界的にインフレ率が上昇する中、政策金利の引き上げは2021年6月の政策金利決定会合から7会合連続となり、直近3会合(2021年12月、2022年2月、2022年3月)では50べーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の引き上げを続けている。

中銀は3月24日付プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で、「供給面でボトルネックが生じていることや、食料・エネルギー価格の上昇から世界的にインフレ率の高進が続いている」とし、「新型コロナウイルス感染拡大に起因するインフレ率の上昇に加え、地政学的な緊張の高まりが深刻化していること、各国の財政、金融政策が大幅に変更されていること」を、世界経済に対する際立ったリスクとして挙げている。

メキシコ国内のインフレ率も高進を続ける。3月24日に国立統計地理情報院(INEGI)が発表した2022年3月前半のインフレ率は前年同期比7.29%で、2月後半と比較すると0.48ポイント増加した。内訳をみると、「食料・飲料・たばこ」が9.84%、「食料品以外の財」が7.11%と増加したことから、コアインフレ率は6.68%となった。非コアインフレも、「野菜・果実」が20.11%と大きく増加したことや、畜産品が12.80%と上昇したことから、上昇率が9.10%と高水準だった。一方で、エネルギー価格は4.60%上昇と比較的落ち着いており、ガソリン、ディーゼルの販売価格を抑える目的で連邦政府が実施している、燃料販売における生産サービス特別税(IEPS)の課税を原油価格の上昇に応じて減額、免除したり、あるいはマイナス課税として補助する措置(注)が効果を発揮しているとみられる。

大統領が中銀よりも先に政策金利の引き上げを発表する一幕も

ロヘリオ・ラミレス・デ・ラ・オ大蔵公債相を通じて、政策金利の引き上げについて知らされていたアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は3月24日、早朝記者会見でインフレ率の高進について言及した際に、同日午後に中銀が正式発表する予定だった政策金利引き上げを事前に公表してしまった。正式発表前だったことに後で気づいた大統領は、夕刻の記者会見で中銀総裁や政策金融決定会合の理事に対し、「前日夜に引き上げについて知ったため、既に公開された情報だと誤解していた」と謝罪した。民間の非営利研究機関のメキシコ競争力研究所(IMCO)は同日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、大統領の発表に対し「中央銀行の独立性を脆弱(ぜいじゃく)にするもので、信頼に傷をつける行為」と批判したが、ビクトリア・ロドリゲス・セハ総裁は新聞社のインタビューに対し、中央銀行の独立性について「疑念の余地はない」とコメントした(現地紙「エルエコノミスタ」3月25日)。

(注)IEPSの課税を全額免除しても燃料価格を抑えられない場合、課税額をマイナスとし、実質的な補助金を支給して価格を抑えている。

(松本杏奈)

(メキシコ)

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