2022/2023年度の予算案公表、電子消費券は倍額を再支給へ
(香港)
香港発
2022年03月01日
香港特別行政区(以下、香港)政府は2月23日、2022/2023年度(2022年4月~2023年3月)の財政予算案を発表した。併せて、2022年通年の経済成長率を2.0~3.5%とする見通しを示した。
2022/2023年度予算案では、2021/2022年度に計上した失業者向けの無担保融資制度、中小企業向け信用保証制度を拡充するほか、個人および企業への税負担の軽減策などを継続して盛り込んだ。また、特に注目されていた電子消費券の支給については、1人当たりの支給額を2021/2022年度の倍額となる1万香港ドル(約15万円、1香港ドル=約15円)に引き上げ、再び実施されることとなった。18歳以上の香港永住権を有する市民などを対象に、分割支給(5,000香港ドルを4月、残りは2022年半ばに)される予定。
主な新たな措置としては、家計向けには、自宅を所有していない市民に対して年度当たり10万香港ドルを上限に住宅家賃控除を認め、中小企業に対しては、家賃負担を軽減する観点から、特定業種のテナント費用の返済猶予を認める立法の導入を表明した。また、広東・香港・マカオ・グレーターベイエリア(以下、「大湾区」)の産業発展支援を目的とした「大湾区投資基金」を50億香港ドル規模で創設することや、北部都市エリア(注1)を含む土地、住宅、交通インフラの開発に1,000億香港ドルを当てることなども盛り込まれた。一方、歳入増の観点から、住宅物件に対する税率を累進課税制度とすることが打ち出された。
これらの結果、2022/2023年度予算案の歳出は8,073億香港ドル、歳入は7,159億香港ドルとなり、財政赤字額は914億香港ドル(注2)になる(2021/2022年度の財政赤字額は162億香港ドル)。一方、2023年3月末時点での香港政府の財政準備金は、政府支出額の13カ月分に相当する8,903億香港ドルとなる見通しで、引き続き一定の財政的余裕は確保される見通しだ。
これらの予算案について、香港中文大学アジア太平洋ビジネス研究所の名誉研究員である李兆波氏は「予算案で示された措置により、苦境にある経済のさらなる悪化は食い止められるだろう。しかし、新型コロナウイルスへの十分な対応策が提示されていないことは憂慮すべきだ」と指摘。また、李氏は「中期的な経済見通しは、香港が自由な人の流れを取り戻すことができるかによって決まる」とコメントしている(「サウスチャイナ・モーニングポスト」2月24日)。
(注1)2021年10月6日の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の施政方針演説において、中国広東省深セン市と接する元朗区と北区を中心としたエリアに、300平方キロ規模の北部都市エリアを構築すると表明されたもの(2021年10月11日記事参照)。
(注2)環境債発行による歳入を含まない。
(野原哲也)
(香港)
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