欧州製造業9団体、EUに高効率コージェネレーションの活用推奨を要望

(EU)

ブリュッセル発

2022年03月04日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)、欧州砂糖生産者協会(CEFS)や欧州製紙連合会(CEPI)など製造業9団体は3月2日、EUに対して高効率コージェネレーション(熱電併給、CHP)の優先的な活用の推進を求める共同声明PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(EUROFERプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。CHPとは発電と熱供給を同時に行うシステムで、9団体によると、欧州の主要産業部門の多くの製造拠点に出力量60ギガワット(GWe)の高効率CHPがあり、オランダとベルギー2カ国の年間電力生産量の合計にほぼ相当する192.5テラワット時(TWh)の電力を生産している。それらは、EUの2020年エネルギー効率目標(注1)で掲げられた削減量の5%に当たる約2,000万石油換算トン(toe)の省エネ、年間4,000万トンの二酸化炭素(CO2)排出削減につながっているという。

9団体は、産業界の電力需要のうち約70%が中温・高温加工作業に係るものだが、コストや技術的制約などにより、その大半は電化できない。多くの産業は最も安価にエネルギー消費とCO2排出を削減するためにCHPを利用しており、産業の脱炭素化を目指す上でもCHPは極めて有用で、将来性がある手段だとした。そこで、2030年までに温室効果ガスを1990年比で少なくとも55%削減するというEUの気候目標(注2)達成に向けて、欧州委員会が2021年7月に発表したエネルギー効率化指令の改正案(2021年7月20日記事参照)など、EUのエネルギー関連の政策枠組みにおいて、企業による高効率CHPの優先的な活用が推奨されるべきだ、と主張した。そして、同指令改正案において、直接的なCO2排出量の上限や使用可能な燃料タイプなどについて、高効率CHPについて過度に厳しい要件を設けないことを提案。9団体は、企業がCHPの活用を制限されると、代替手段としてより効率が低く、炭素集約的な手段で熱供給を賄ったり、自社施設での発電ではなく、欧州の電力網から電力供給を受けたりすることでエネルギーコストが増加する可能性がある、といった懸念を示した。そこで、企業側が引き続きそれぞれの企業活動ニーズに最も合った発電・熱生成の設備を柔軟に適応、運用できることが必要で、電力網の安定にとっても汎用性が高く、有益だと述べた。

CHPに必要なエネルギー製品や電力への課税免除も提案

9団体はほかに、エネルギー効率指令の改正案において、CHPを再生可能・低炭素エネルギーが十分に供給可能となるまでの省エネ手段として認めることや、産業界が実際に削減可能なエネルギー消費量を把握し、現実的な基準を策定することも求めた。

また、同指令改正案と同時に発表されたエネルギー課税指令の改正案についても、CHPの気候目標達成への貢献を保証し、活用を促進するため、エネルギー集約型産業へのエネルギー課税の免除だけでなく、CHPに必要なエネルギー製品や電力への完全かつ明確な課税免除を明記することを提案した。

(注1)2012年に採択された現行のエネルギー効率指令では、2007年時点で推定される2020年のエネルギー消費量を、2020年までに20%削減するとしていた。

(注2)EUの2030年および2050年の気候目標や関連政策などについては、調査レポート「『欧州グリーン・ディール』の最新動向」(2022年2月)を参照。

(滝澤祥子)

(EU)

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