ゼレンスキー・ウクライナ大統領が米議会で演説、バイデン米大統領は追加支援を発表
(米国、ロシア、ウクライナ)
ニューヨーク発
2022年03月17日
ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は3月16日、米国連邦議会でオンライン演説を行った。演説では、ロシアの侵攻による被害が続いていることについてビデオ動画を交えて説明した上で、米国に対してウクライナ上空における飛行禁止区域の設定や、戦闘機の提供、ロシアへのさらなる制裁発動を求めた。
ゼレンスキー大統領はまず、ロシアによる軍事行動を軽減するために、ウクライナ上空の飛行禁止区域の設定を求めた。これはかねて欧米諸国に求めている事項で、前日に行ったカナダ連邦議会での演説でも強調している(2022年3月16日記事参照)。しかし、これに関して、米国を含むNATOは事態をエスカレートさせるとして実施を否定し続けている。ゼレンスキー大統領は、それが過度な要求であるならば、戦闘機を供与してほしいと呼び掛けたが、これについてもバイデン政権は同様に否定している。ゼレンスキー大統領は追加の制裁として、ウクライナ侵攻に責任のある者とつながりのあるロシアの全ての政治家を制裁対象に指定し、全ての米国企業がロシアから撤退し、ロシア製品に対して全ての米国の港湾を閉鎖すべきだと訴えた。最後には、ジョー・バイデン大統領に対して「世界のリーダーになってほしい。それはすなわち、平和のリーダーになるということだ」と呼び掛けた。
バイデン大統領はゼレンスキー大統領の演説後に会見を行い、ウクライナに対する8億ドルに上る追加の軍事支援策を発表した。前日には合計136億ドルに上るウクライナ支援を含む2022会計年度の予算が成立したばかりだ(2022年3月14日記事参照)。ホワイトハウスのファクトシートによると、今回の支援策には、対航空機装備の提供などが含まれるとしたが、ゼレンスキー大統領が求めたウクライナ上空の飛行禁止区域設定と戦闘機の提供は含まれなかった。バイデン大統領は同盟国と結束して、人道面を含めたさらなる支援を続けていくとした。
なお、バイデン大統領は3月24日にベルギーのブリュッセルで開催予定のNATOサミットなどに参加するために訪欧を予定している。ロシアとの直接の対話としては、ジェイク・サリバン大統領補佐官が3月16日に、ロシアのニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記と会談を行っている。ホワイトハウス公表の会談要旨によると、サリバン氏はロシアが外交に真剣であるならウクライナへの攻撃をやめるよう伝えるとともに、化学・生物兵器を使用した場合に伴う結果について警告したとしている。
(磯部真一)
(米国、ロシア、ウクライナ)
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