ウクライナ情勢の悪化に伴い食料確保の動き、経済にも影響
(エジプト)
カイロ発
2022年03月18日
エジプト貿易産業省は3月11日、小麦、小麦粉、パスタなどの食品の輸出を3カ月間禁止、翌12日にはトウモロコシなどの輸出禁止も発表した。ウクライナ情勢の悪化を受け、食料価格が上昇する中、国内の食料確保に動いた格好だ。4月からのラマダン期間は、家族や親戚、友人が集まって食事する機会が増えることもあり、食品の需要拡大を見越した対応といえる。
小麦は、国内生産もあるが、約6割は輸入に依存している。国連食糧農業機関(FAO)によると、2020年時点でエジプトは小麦輸入金額で世界1位、重量で3位だ。特に、ロシアとウクライナからの輸入が約85%を占めるため、政府は小麦の輸入先の多角化を図っている(2022年2月22日記事参照)。
ウクライナ情勢の悪化に伴う、世界的な資源価格や食料価格の上昇などを要因として、エジプトの2月の消費者物価指数(CPI)上昇率は、前年同月比8.8%増となった。特に野菜・果実は35.1%増と高騰し、市民の家計に影響を与えている。また、外貨準備高については、ウクライナ情勢の悪化以前にも輸入額が増大していたため、2020年6月には輸入額の7.3カ月分相当の外貨準備だったのが、2021年12月には6.2カ月分相当へと減少していた。物価の高騰が長期化すれば、食料や石油などを輸入に依存するエジプトにとって、輸入に充てる外貨の不足にもつながる可能性がある。さらに、ロシアとウクライナからは観光客も多かったため、エジプトの貴重な外貨収入でもある観光業への影響も懸念される。
なお、外交面では、エジプトはロシアからの軍事支援や原子力発電所建設の案件もあるが、貿易・投資で結びつきの強い欧州や、小麦や食料を輸入するウクライナとの関係もあるため、政治的に明確な立場は示さず、問題の早期解決を訴える姿勢だ。3月2日の国連の「ロシア非難決議」には賛成したものの、アブドゥルファッターハ・エルシーシ大統領は同9日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と電話会談を行うなど、ロシア側との関係も維持する構えだ。
(井澤壌士)
(エジプト)
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