南アのシンクタンク、アフリカ域内の非関税貿易コストを公表

(アフリカ、南アフリカ共和国、ケニア、エジプト、モロッコ、ナイジェリア)

中東アフリカ課

2022年03月18日

南アフリカ共和国の通商シンクタンクのトララック(Tralac)は2月28日、アフリカ域内の非関税貿易コスト(2015~2019年)について公表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。同コストは関税を除き、輸送コストや貿易手続き上のコストなどを含み、製品価値を100%としたときの割合で表す(注1)。データは2015年から2019年の国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)-世界銀行貿易コストデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づいて作成された。

アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)については、原産地規則などの交渉が決着しておらず、本格的な運用に至っていないが、将来的にアフリカ域内の関税撤廃が見込まれる中、非関税貿易コストは日系企業の進出先を決める上で一助ともなり得る。

トララックの資料によると、アフリカ域内の非関税貿易コストは平均して283%だった。ジェトロが上記データベースに基づいて試算したところ、ASEANで176.3%、EUで88.3%と大きな開きが確認された。

アフリカの各地域経済共同体(RECs)域内での非関税貿易コストをみると、最もコストが低かったのは東アフリカ共同体(EAC)で140%、次いで、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)が195%、南部アフリカ開発共同体(SADC)が230%、東南部アフリカ市場共同体(COMESA)が281%だった。

国別でみると、コストが高い国と低い国はそれぞれ次のとおり。

〇非関税貿易コストが高い国

1位スーダン、2位チャド、3位マダガスカル、4位ルワンダ、5位ジンバブエ、6位ボツワナ、7位エチオピア、8位ウガンダ、9位シエラレオネ、10位サントメプリンシペ。

〇非関税貿易コストが低い国

1位南ア、2位コンゴ共和国(注2)、3位ザンビア、4位コートジボワール、5位セーシェル、6位チュニジア、7位モーリタニア、8位モロッコ、9位エジプト、10位リベリア。

アフリカの経済主要国(南ア、ケニア、エジプト、モロッコ、ナイジェリア)で比較してみたところ、どの国ともコストが低かったのは南アで、特にケニア間では118.4%だった(添付資料図参照)。一方、ケニア・ナイジェリア間では269.6%と最もコストが高かった。

日本とアフリカ主要国との非関税貿易コスト(注3)でも、南ア(98.5%)が最も低く、単純に非関税貿易コストだけを見れば、南アの優位性が際立つ結果となった。

(注1)例えば、日本と南アの間の非関税貿易コストが98.5%ならば、製品価値100%に加えて、その98.5%が追加的に非関税コストとして発生する計算となる。実際にはこれに加えて輸入国の関税が発生する。

(注2)トララクの資料上ではコンゴ民主共和国だが、ジェトロでデータを確認したところ、該当箇所はコンゴ共和国だった。

(注3)日本と主要な貿易相手国、アフリカ諸国のコスト(2015~2018年平均)は次のとおり。中国(62.0%)、米国(69.4%)、タイ(62.8%)、南ア(98.5%)、ケニア(189.0%)、エジプト(179.8%)、モロッコ(165.0%)、ナイジェリア(165.5%)。

(小林淳平)

(アフリカ、南アフリカ共和国、ケニア、エジプト、モロッコ、ナイジェリア)

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