フィッチ・レーティングス、韓国の信用格付けをAAマイナス(安定的)で据え置き

(韓国)

ソウル発

2022年02月09日

韓国企画財政部は1月27日、信用格付け会社のフィッチ・レーティングスが韓国の信用格付けをAAマイナス(安定的)に据え置いたと発表した。概要は以下のとおり。

1.総評

韓国の信用格付けは、輸出などの強い対外健全性や経済回復の成果といった韓国経済の強みと、北朝鮮関連の地政学的な緊張、ほぼ同格の国に比べて低い水準の世界銀行の「世界ガバナンス指標(WGI)」、高齢化に伴う構造的なリスク要因などを反映した結果。

信用評価の観点では、国家財政は短期的には債務増加に耐えられる水準にあるものの、中期的には信用格付けの圧迫要因となる可能性がある。

2.成長

消費の回復、好調な輸出などにより、2022年のGDP成長率は3%台を見込む。新型コロナウイルス対策としての社会的距離の確保強化、オミクロン型変異株の感染拡大といったリスクにもかかわらず、消費の回復は続くとみられる。輸出は好調さは続くものの、中国の成長減速などの影響で、勢いはやや鈍る見通し。

3.財政

韓国政府が提出した補正予算案を考慮すると、財政収支は2021年と比べ改善するとみられ、国家債務の増加幅もほぼ同格の国と類似した水準(注)になると予想。政府では「積極的な財政支出および財政赤字の容認」の基調が強まっているとみられる。これは高齢化に伴う長期的な支出の要因が存在する状況下で、中期的に信用格付けを圧迫する要因として働く可能性がある。

4.通貨

金融リスク、物価上昇率の管理などを理由に2022年に、韓国銀行が基準金利を0.25%ずつ2回にわたり引き上げると予想。高い物価上昇律は一時的な現象とみられ、2022年から2023年にかけて物価上昇圧力は徐々に緩和する見通し。

5.対内外のリスク

不動産価格の上昇で2021年の家計債務は急増したものの、家計資産、返済能力などを踏まえると、リスクはうまく抑えられていると評価。

南北関係については、韓国の対話再開、朝鮮戦争終戦宣言への努力にもかかわらず、北朝鮮との緊張は高まりつつある。また、非核化交渉は大きな進展が見られない状態。

純債権国としての地位、経常収支黒字の持続、十分な外貨準備高の水準といった堅調な対外健全性は、米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めによるグローバル金融市場の変動に対する緩衝材の役割を果たすだろう。

(注)2022年のGDPに対する国家債務の比率は49.9%(2019年比12ポイント上昇)となる見通し。

(当間正明)

(韓国)

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