バイデン米大統領、連邦政府発注の建設工事で労使協定締結を求める大統領令に署名

(米国)

ニューヨーク発

2022年02月07日

ジョー・バイデン米国大統領は2月4日、連邦政府が発注する建設工事において、労使間で労働条件に関する協定の締結を求める大統領令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに署名した。労働条件が粗悪になりがちな公共建設工事で労働者の権利を保護し、労働の質を高める狙いがあるとみられる。

大統領令は、連邦政府が発注する3,500万ドル以上の建設工事において、賃金や雇用条件、労使間で紛争が生じた場合の解決方法などについて、労働組合と請負業者が事前に協定を結ぶことを義務付ける。政府機関に対しては、所管の建設工事でこれらが順守されているかについて、行政管理予算局に四半期ごとに報告することを求める。ジェン・サキ大統領報道官は、この大統領令は連邦政府の建設契約工事2,620億ドルに影響を与え、それに従事する約20万人の仕事の質を向上させる可能性があると述べている。また、バイデン大統領は訪問したメリーランド州の鉄工組合で「この大統領令は、より良い米国を、予定通りに、より低コストで築く上で役に立つだろう」と意義を強調した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙2022年2月4日)。

最近、民間企業でも労働者保護を目的として、労働組合を結成する動きが目立っている。スターバックスでは2021年12月9日にニューヨーク州バッファローの店舗で、同社にとって全米初となる労働組合が結成され、1月31日時点で19州54店舗の従業員が労働組合の結成にかかる選挙を実施しようとしている(「NPRニュース」2022年1月31日)。同様に、ニューヨーク市スタテンアイランドのアマゾン倉庫で働く従業員も2月2日、労働組合結成の是非を問う選挙への投票を要請する嘆願書を全米労働関係委員会に提出したことを発表した。アラバマ州のアマゾン施設で働く従業員も組合選挙を近く実施するとしている(「CNETニュース」2022年2月2日)。

米国の労働組合の組織率は2021年に10.3%で、1983年の20.1%から半減している。これは、諸外国と比べて低水準かつ歴史的に低下傾向にあり、日本の組織率16.9%(2021年)と比べても低い。しかし、新型コロナウイルスのパンデミックを契機に、多くの労働者が職場を離れ、残された労働者への負担が増したことなどから、労働条件の改善を求める動きが広がっている。他方、労働者保護が急激に進めば、企業にとってコスト上昇の一因となり、バイデン政権が目下の課題とするインフレの助長につながりかねない。歴史的に労働者重視を掲げてきた民主党だが、長引く高インフレを前に、労働者保護の分野でも難しい政策バランスが求められている。

(宮野慶太)

(米国)

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