欧州委の新標準化戦略、産業界は賛同しつつ、警戒感や注文も表明

(EU)

ブリュッセル発

2022年02月08日

欧州委員会が2月2日、新たな標準化戦略を発表(2022年2月4日記事参照)したのを受けて、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は同日に声明を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連盟は、民間投資にとっても欧州は強力な標準化制度を確立し、規格策定プロセスを改善し、迅速化させるべきであり、それが今回の新戦略の成功や欧州のデジタル化、グリーン化の推進につながると述べた。しかし、欧州委の政治的な目標によって、市場主導型の標準化が進まなくなるような事態に陥ってはならないと、くぎを刺した。また、EUは国際的な標準化機関と緊密な連携を保つべきであり、欧州の産業競争力は国際的な規格の策定で主導的な立場になれるかどうかにかかっていると指摘した。さらに、欧州の標準化制度は「関係者のコンセンサスに基づく」「各加盟国の代表が参画する」などの原則に基づいているが、同連盟はこうした原則は引き続き守られるべきだとした。最後に、EUにとって国際的に重要な優先分野を選定し、EUと加盟国で政治的な調整を行うために、欧州委が新たに設けるハイレベル会議などの場が現在の規格策定プロセスの戦略的な課題や停滞状況に対応するものとして、期待を示した。

欧州機械・電気・電子・金属加工産業連盟(ORGALIM)も同日に声明を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。新戦略は国際規格策定へ向けたより戦略的で調整が取れたアプローチを目指し、策定過程でEUの利益を守ることを目指しているが、提案された内容を評価するには、現在の制度がスピードや効果の観点で著しく機能低下に陥っていることも考慮すべきだとした。ORGALIMは、レベルの高い規格の策定には産業界が参画する必要があり、優先順位の設定にも産業界が関わることが重要という考えの下で、発表された新戦略の分析を行うとした。また、欧州単一市場や欧州の競争力、イノベーション力を効果的に支える標準化制度の策定に提言を続けていくとした。

中小企業団体は規格の実装を推進するサポート求める

欧州中小企業連合会(SMEunited)も同日、声明を発表して戦略案を歓迎した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連合会は、中小企業も採用しやすい規格は中小企業による規格の実装、新しいデジタル技術やより持続可能な製品・サービスの採用を推進し、グリーン化、デジタル化の推進にとって必須だと指摘。特に、中小企業にとってはデータへのアクセスが重要で、規格が相互運用やデータへのアクセスが技術的にできることを保証する必要があるとした。また、欧州委が標準化制度の包括性や、中小企業や市民社会への配慮を示した点、欧州委が新たにEU加盟国との調整の場を立ち上げることも評価し、中小企業の代表組織のそうした場への参加を可能にするように求めた。さらに、中小企業も含め、産業界全体で規格の実装を推進するために、中小企業には財政的支援や支援スキームが必要だと指摘。例えば、規格を各加盟国の言語で読めるようにする、中小企業向けの価格設定スキームを策定する、職業教育・訓練で規格について重視するなどを提案した。

(滝澤祥子)

(EU)

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