国営航空会社エア・インディア、民営化でタタ・グループ傘下に

(インド)

ニューデリー発

2022年02月02日

インド政府は1月27日、大手財閥タタ・グループに対する国営航空会社エア・インディアの売却を完了したと発表した。売却総額は1,800億ルピー(約2,700億円、1ルピー=約1.5円)で、国営・公営企業の民営化を推し進めるモディ政権下の象徴的な大型案件となった。

今回の売却対象は、エア・インディアの株式100%のほか、同子会社の格安航空会社エア・インディア・エクスプレス(AIXL)の株式100%、空港のグランドハンドリング事業を行うエア・インディアSATSエアポート・サービシズ(AISATS)の同社保有株式50%だ。エア・インディアが抱える負債総額6,156億2,000万ルピーのうち約25%に当たる1,530億ルピーをタタ・グループが肩代わりすることから、タタ・グループによる実際の支払額は、落札価格との差額270億ルピーとなった。なお、エア・インディアや同子会社が所有していた不動産などの周辺資産(1,471億8,000万ルピー相当、2021年8月31日時点の評価額)は、残りの負債とともに、インド政府が出資するエア・インディア資産保有会社(AIAHL)に移管された。

エア・インディアは、日本を含め世界各国に就航するインドのフラッグキャリア航空会社だ。元々1932年にタタ・グループが創業した同社は1953年に国有化されたが、規制緩和で航空業界への民間参入が進んだ1990年代半ば以降、経営が悪化。インド政府は2000~2001年と2017~2018年に、同社の部分的な民営化を試みたが、応札者なしで不調に終わった。今回、完全民営化の内容に切り替えて2020年1月にあらためて入札を公告したインド政府は、2021年10月、最終候補に残っていた地場格安航空会社スパイスジェットの経営者アジャイ・シン氏を中心とするコンソーシアムを破り、タタ・グループの持ち株会社タタ・サンズの100%子会社タレスが落札した、と発表していた。

従来からタタ・グループは、マレーシアのエアアジア・アビエーションとの合弁格安航空会社エアアジア・インディアを経営するほか、シンガポール航空との合弁企業タタSIA航空もフルサービスキャリア「ビスタラ」を運航している。エア・インディアを傘下に収めたタタ・グループが、今後、航空業界においてどのような戦略を展開するかにも関心が集まるが、同グループは2022年1月27日付で買収の完了を発表しただけで、今後の方針はまだ明らかにしていない。

1947年の独立後、社会主義型経済を目指したインドでは、幅広い分野で国営・公営企業が計300社以上誕生した。しかし、経済自由化政策に転換した1991年以降は、生産性の低い国営・公営企業の合理化が課題に浮上。現モディ政権下においては、財務省投資・公的資産管理局(DIPAM)が中心となり、4つの戦略的分野(注)で最小限の公的関与を残しつつ、それ以外の各分野では民営化や解体を進める方針が採られている。

(注)原子力・宇宙・防衛、運輸・通信、電力・石油・石炭・その他鉱物、銀行・保険・金融サービスの4分野。

(広木拓)

(インド)

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