政府がグリーン水素製造の入札含む戦略発表

(デンマーク)

欧州ロシアCIS課

2022年02月03日

デンマーク政府は1月27日、電力をグリーン水素(注1)やその他のEフューエル(e-fuel、注2)へ変換する「パワー・トゥ・エックス(Power to X、PtX)技術の戦略」を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。PtXとは、電力により水を電気分解して水素を生成する技術の総称。グリーン水素は輸送用燃料や産業燃料として直接使用するほか、アンモニア、メタノールなど他のPtX製品やEフューエルなどへも加工可能だ。

2021年12月に開始した同戦略により、2030年までに4~6ギガワット(GW)の電解容量の構築を目指す。さらに、グリーン水素などの製造の産業化を支援してコストを削減する目的で、入札を通じて12億5,000万デンマーク・クローネ(約217億1,250万円、1デンマーク・クローネ=約17.37円)を投資するとした。

政府は同戦略の中で、再生可能エネルギー由来の電力を使用する上で費用対効果が最も高い方法は、風力エネルギーをバッテリー式電気自動車の推進力にするなどの「直接電化」であり、PtXはこれと比べ電気料金や電解プラントへの投資を伴い、高コストだと認めた。その上で「直接電化」が困難な航空や海運、大型貨物輸送(道路)、工業などの産業分野向けに、グリーン水素などEフューエルの生成と使用を推進するとした。

さらに、グリーン水素の生成には大量の再生可能エネルギー由来の電力が必要だが、デンマークは洋上風力発電の資源が豊富で、北海で発電容量が大幅に拡大する可能性があり、デンマーク議会で2つのエネルギー島(注3)の設立が可決されたことから、グリーン水素の生産に適していると自負した。

同戦略において、デンマークでPtXを推進するための以下の4つの政府目標が確立された。まず、PtXは気候法が定める、二酸化炭素排出量を2030年までに1990年比で70%削減を目標とし、2050年までにカーボンニュートラルを達成するとの目標の実現に貢献できなければならないとした。さらに、規制の枠組みとインフラの整備、PtXとエネルギーシステム間の相互作用の改善(注4)、PtXの製品・技術の輸出の必要性が盛り込まれた。

(注1)再生可能エネルギー由来の電力を利用した水電解により、二酸化炭素を排出せずに生成される水素。

(注2)グリーン水素や、グリーン水素から合成された脱炭素の気体または液体の燃料。

(注3)上述の戦略によると、洋上風力により最終的に12ギガワット(GW)を発電し、本土へも供給予定。

(注4)PtXの電解プラントは柔軟な稼働が可能で、水素の生成量を大幅に調整できるため、例えば、主要な再生可能エネルギー源の風が吹かない日には通常、電力価格が高いため、減産または稼働停止する。

(上田暁子)

(デンマーク)

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