国民投票で青少年向けのたばこ広告を禁止する案が可決

(スイス)

ジュネーブ発

2022年02月25日

スイスで国民投票が2月13日に実施された。「子供と青少年向けのたばこ広告禁止」および「動物実験・人体実験禁止」に関する2つのイニシアチブ(国民発議、注1)と、「印紙税に関する連邦法改正」および「メディアへの財政支援強化」に関するレファレンダム(注2)の投票が行われた。それぞれ、56.61%で可決(投票率:44.23%)、79.08%で否決(44.19%)、62.67%で否決(44.02%)、54.56%で否決(44.13%)された。

1つ目は、たばこの広告に関するイニシアチブで、今回最も注目されていた。これまでスイスでは、テレビやラジオでの未成年を対象としたたばこの広告は禁止されてきた。イニシアチブは、その禁止範囲を厳格化し、子供や青少年がアクセスできるあらゆる場所(報道、ポスター、インターネット、映画館、キオスク、イベントなど)での広告を全面的に禁止することを求めていた。連邦参事会(内閣)と議会は、イニシアチブの内容は行き過ぎだとして間接的対案を提案し、反対票を投じるよう国民に呼び掛けていた。その内容は、ポスターや映画館での広告掲載、無料サンプル配布、タバコ関連企業がスイスで開催される国際イベントのスポンサーになることを禁止する一方で、報道、インターネット、キオスクでの未成年を対象としない広告、国内イベントでのスポンサーは許可するものだったが、結果的にイニシアチブは可決された。

2つ目のイニシアチブは、動物および人体実験の禁止、動物実験を経て開発された製品の輸入禁止、動物実験を伴わない研究への連邦政府による財政的支援を求めていた。可決された場合、スイスにおけるワクチンを含む医薬品の開発や研究が大きく妨げられる可能性があり、全ての政党、連邦参事会、議会が反対していた。同イニシアチブに関して、アラン・ベルセ内務相は、スイスは既に世界で最も厳しいレベルの動物保護法を課しており、動物実験は真に必要な場合のみ許可されるよう厳密に定められていると述べていた。

3つ目は、中堅企業や大企業が資本調達をする際に課されてきた印紙税(注3)を廃止する法案に対するレファレンダムだった。連邦参事会、議会、スイス最大の経済団体エコノミースイスやスイス商工業連盟(USAM)は、印紙税廃止によって投資コストが削減され、企業の成長や雇用の促進に繋がるとの理由で賛成していた。一方、レファレンダムを提起した委員会は、印紙税廃止によって恩恵を受けるのは、課税対象の大企業のみで、国民や小規模の企業は税収減によって被る不利益の方が大きいとして反対していた。

4つ目は、広告収入の減少などによって財政的に苦慮している、スイスの地元メディアへの財政支援強化に関する法案に対するレファレンダムだった。同法案は過大な予算負担が生じることや、メディアの政治からの独立性が損なわれることなどが懸念され、否決された。

(注1)有権者10万人以上の署名を要件として、国民が憲法改正の提案を行うもの。

(注2)議会が可決した法律の是非について国民が投票するもの。

(注3)企業が株式発行などによって資本調達をする場合に、100万スイス・フラン(約1億2,400万円、CHF、1CHF=約124円)を超える部分に対して1%が課税される。

(城倉ふみ、マリオ・マルケジニ)

(スイス)

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