対ロ追加経済制裁による金融市場や国際貿易・物流での影響を懸念

(カザフスタン、ロシア、中央アジア)

タシケント発

2022年02月18日

ロシアが主導するユーラシア経済連合(EEU)の加盟国で、経済面でロシアとの関係が強いカザフスタンでは、ウクライナをめぐり欧米諸国による対ロシア追加経済制裁が発動された場合、カザフスタン経済にも影響が出ると専門家の見方は一致している。

カザフスタン金融協会アナリストのラマザン・ドソフ氏は自国通貨テンゲの対ドルレートの今後の推移について、「変動の大きさは制裁の内容と不確実性に依存する」としながらも、「ルーブルの下落にもかかわらず、テンゲは1ドル=434~435テンゲの範囲で安定している。中央銀行のオペレーション、世界的な原油価格上昇により、ドルとルーブル、ドルとテンゲの為替レートの相関性は以前より低下している」と分析している(LS 1月28日)。

国際貿易への影響について、金融企業フィナムのアナリスト、ディアス・クマルベコフ氏は「カザフスタンの対ロシア貿易は貿易総額の24%を占め、両国間の決済通貨であるルーブルの変動に大きく左右される。ロシア国内でインフレが進めば、ロシアからの輸入が多いカザフスタンでもインフレが進む」とし、カザフスタンが産出する石油・天然ガスがロシアを通るパイプラインで欧州に輸出されていることから、「ロシア経由の石油・天然ガス輸出ルートが制限された場合、経済的打撃は大きい」と述べている(LS 1月28日)。

カザフスタンを含む中央アジア諸国は、ロシア、中国、欧米諸国とのバランス外交が国家運営の基本となっている。ロシアで働く労働移民の送金はウズベキスタン、キルギス、タジキスタンにとって国際収支の均衡に必須で、ロシアとの良好な関係維持とロシア経済の安定化が重要だ。一方、タジキスタンの国際戦略問題研究所の元副所長のセイフルロ・サファロフ氏は「中央アジア諸国には欧米からの資金援助が必要だ。また、ウクライナは中央アジア諸国にとって外国ではない。共通の歴史的過去を持ち、各国ともある程度の関係性を持っている」と述べ、中央アジア各国政府は現在の状況を複雑な思いで注視していると語っている(ラジオ・アザッティク2月16日)。

(増島繁延、高橋淳)

(カザフスタン、ロシア、中央アジア)

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