トルドー・カナダ首相、緊急事態法を初めて発動、抗議デモ対応で

(カナダ)

トロント発

2022年02月15日

カナダのジャスティン・トルドー首相は2月14日、1月末から続くトラック運転手らによる新型コロナウイルスのワクチン接種義務化などへの抗議デモに対し、緊急事態法を発動外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、抗議デモに対処するための一時的な権限を連邦政府に与える。

2月14日時点でオンタリオ州ウィンザーのアンバサダー橋は再開されているものの(2022年2月14日記事参照)、アルバータ州クーツやマニトバ州エマーソンなどの国境封鎖は続いており、3週目に入ったオタワ市街地でのデモ参加者はいまだに占拠を続けている。同法の発動で、封鎖に参加している人は、平和的かつ直ちに地元に戻るよう要請され、連邦政府は封鎖を終わらせるまであらゆる選択肢を検討し続けるという。

クリスティア・フリーランド副首相兼財務相は、違法な封鎖により、投資やビジネスを行う場所としてのカナダに対する世界の信頼が損なわれているとし、同法発動の一環として、3つの措置を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。第1に、クラウドファンディング・プラットフォームとその決済サービス・プロバイダーを、マネーロンダリングおよびテロ資金調達防止規則の適用範囲として含めること。これは、今回クラウドファンディングによって集められた資金が、違法な封鎖や違法行為の支援に利用されていることが判明したため、カナダ金融取引・報告分析センター(FINTRAC)への報告義務を適用することにより、不正な資金が流入するリスクを減らすことを目的とする。第2に、金融機関に対して、口座が違法な封鎖や占拠を助長するために使用されていると疑われる場合、金融サービスの提供を一時的に停止する権限を与える。第3の措置として、金融機関に対し、違法な封鎖に関与している人物との関与がないか確認し、王立カナダ騎馬警察(RCMP)または安全情報局(CSIS)に報告するよう指示した。また、銀行やその他金融サービス提供者は、裁判所の命令なしに、違法な封鎖に関わっている個人または企業の口座を直ちに凍結もしくは停止することができるようになるとした。今回の措置を通じて、政府関係機関は、銀行やその他金融サービス提供者と関連情報を共有し、協力してこれらの違法な封鎖の資金源を断つことを可能にすることが大きな狙いだ。

緊急事態法の発動は、1988年の制定以来初となる。同法が制定される前の「戦時措置法」は、第一次世界大戦時にウクライナ系移民、第二次世界大戦時には日系移民の強制移住などに適用された、民主主義や人権の根幹を揺るがす法律といわれ、1970年代のケベック解放戦線のテロ行為に対抗する手段として発動されたのが最後だ。

そうした背景もあり、トルドー首相は会見で、「これらの措置の範囲は、期間を限定し、対象地域を絞り、対処すべき脅威に対して合理的で釣り合いの取れたものでなければならない」と述べた。また、同法の発動には、州首相との事前協議が義務付けられており、2月14日午前中に開催された協議では、ケベック、アルバータ、サスカチュワン、マニトバ各州がそれぞれの州への適用に反対、オンタリオおよびニューファンドランド・ラブラドール両州は発動に支持を表明した(「グローブ・アンド・メール」紙2月14日)。

(飯田洋子、江崎江里子)

(カナダ)

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