ロボット・コーヒーバリスタ開発のクラウン・デジタル、日本での製造も視野に

(シンガポール、日本)

シンガポール発

2022年02月18日

ロボット・コーヒーバリスタを開発するシンガポールのスタートアップ、クラウン・デジタルのキース・タン創業者兼最高経営責任者(CEO)は2月10日、ジェトロとのインタビューで、資本業務提携先のJR東日本と合弁会社を設立後、日本国内での製造も視野に入れていることを明らかにした。同社が開発したロボット・バリスタ「Ella(エラ)」は2021年12月8日からJR東日本の東京駅と横浜駅に設置され、3カ月間のテスト販売を行っている。

写真 クラウン・デジタルのキース・タン創業者兼CEO(ジェトロ撮影)

クラウン・デジタルのキース・タン創業者兼CEO(ジェトロ撮影)

「Ella」は、専用のアプリで注文すると、ロボットアームによって全自動でコーヒーを入れ、キャッシュレスで決済するというもの。タンCEOが2015年にコーヒー店を創業した際、人材採用難に直面したことから、人手を使うことなくコーヒーを24時間入れることができるロボット・バリスタの開発を思い立った。「Ella」第1号が完成したのは2018年。同社はロボットの設計から製造、ソフトウエアの開発、運営、メンテナンスまでを一貫して行っている。今回のJR東日本の駅構内でのテストマーケティングに際して、外国企業として初めて、JR東日本の交通系電子マネー「Suica(スイカ)」を決済手段として実装することが認められた。

同社が最初の海外展開先として選んだのは日本。タンCEOはその理由について「日本とシンガポールは高齢化と人材不足という似た課題を抱えている」と説明した。駅にロボットを設置したのは「駅に最も人々が集中するからだ」という。日本の鉄道会社との提携を模索していたところ、ジェトロからJR東日本を紹介された。クラウンは2020年12月、JR東日本と資本業務提携を締結。両社は今後、合弁会社を設立する予定だ。クラウンは2025年までに「Ella」を日本国内に600カ所以上設置することを計画している。同氏は日本国内での「Ella」製造を検討している理由について「日本は製造能力が高い。(新型コロナウイルスの)パンデミックに伴って船積みコストが高騰していることからも、日本で製造したい」と語った。

クラウンは現在、シリーズAの資金調達中だ。同社は資金を調達後にシンガポールの鉄道会社SMRTの駅30カ所に「Ella」を設置する計画だ。このほか、海外の他の鉄道会社や企業からオフィス内の設置の引き合いもあるという。タンCEOは「JR東日本との協業によって、世界の注目を集めることができた。日本で作り上げたビジネスモデルを国外に輸出したい」と期待を示した。

(本田智津絵)

(シンガポール、日本)

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