アルゼンチン原発会社、中国の加圧水型軽水炉導入で契約締結

(アルゼンチン、中国)

ブエノスアイレス発

2022年02月02日

アルゼンチン原子力発電会社(NA-SA)は2月1日、同国で4基目となる原子炉「アトーチャ3号機」(Atucha III)の建設に係るEPC契約(注)を中国核工業集団(CNNC)と締結したと発表した。中国が世界展開に向けて設計・開発した120万キロワット(kW)級の第3世代加圧水型軽水炉「華龍一号」(形式名:HPR1000)が導入される。2月1日付の現地紙「アンビト」電子版によると、建設費用は約80億ドル、建設期間は8年半、運転期間は60年だ。

NA-SAは、工業生産・開発省が79%、国家原子力委員会が20%、残りを国営エネルギー会社IEASAが出資する国営企業。同社が運営するブエノスアイレス州サラテに立地するアトーチャ原子力発電所のアトーチャ1号機(30万kW級加圧重水炉)、2号機(70万kW級加圧重水炉)、コルドバ州のエンバルセ原子力発電所の1基(60kW級カナダ型重水炉)の計3基の原子炉が稼働している。

NA-SAによると、アトーチャ3号機のプロジェクトは、2014年7月に締結されたアルゼンチンと中国間の「包括的戦略パートナーシップの設立に係る共同宣言」「経済協力・投資枠組み協定」と、2015年2月締結の「加圧水型原子炉建設プロジェクトにおける協力に関する協定」に基づくものだ。

2021年7月に国営テラム通信が行ったNA-SAのホセ・ルイス・アントゥネス社長へのインタビューによると、2015年の両国の合意では、NA-SAとCNNCが共同で設計エンジニアリングと調達、建設を行い、中国側が建設費用の全額を融資するかたちだったが、2015年12月のアルゼンチンの政権交代によりその計画は放棄された。2019年12月に発足したフェルナンデス政権の下で策定された新たな計画では、NA-SAはCNNCとEPC契約を締結し、NA-SAは完成後に運転、保有するとしている。2月1日付の現地紙「クラリン」は関係者の話として、建設費用の全額を中国側が融資し、売電収益によりそれを返済すると伝えている。

(注)設計エンジニアリング、調達、建設を一括したプロジェクトとして請け負う契約方式。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、中国)

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