加オンタリオ州がデモを受け非常事態宣言、米加国境の橋封鎖は裁判所が解除命令

(カナダ、米国)

トロント発

2022年02月14日

カナダ・オンタリオ州のダグ・フォード州首相は2月11日、新型コロナウイルスのワクチン義務化など、感染拡大防止のための公衆衛生対策に反対するトラック運転手らによる抗議デモに対し、非常事態宣言を発令した。国会議事堂のあるオタワ中心部に続き(2022年2月8日記事参照)、7日には州南部のウィンザーと米国デトロイトを結ぶアンバサダー橋がトラックなどにより封鎖されたことなどが背景にある。この橋は、カナダで最も交通量の多い国境で、毎日4億5,000万カナダ・ドル(約410億円、Cドル、1Cドル=約91円)以上の物資が運ばれており、自動車産業を中心に、カナダと米国の双方で、トヨタをはじめ製造現場の操業停止など多大な影響が出ている。

フォード州首相は、国境と高速道路の封鎖を違法とする命令を発令する計画を発表。違反者は10万Cドルの罰金と懲役刑の対象となると述べ、デモ参加者が退去を拒否した場合には、政府は個人および商業免許の取り上げを検討するとしている。

カナダ自動車部品製造業協会(APMA)も、アンバサダー橋封鎖を止めるための申し立てをウィンザー市とともに行い、高等裁判所は同橋の通行を妨害する行為を禁止する命令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを下した。命令は11日午後7時に発効し、10日間有効となる。カナダ国内の160人以上のビジネスリーダーからなるビジネスグループも11日、抗議デモが引き起こした物流の停滞などの問題を解決すべく国境封鎖を終わらせるよう政府、そして各政党の指導者に公開書簡で呼びかけを行った。

抗議デモは当初、米国から国境を越えるトラック運転手へのワクチン接種義務に対応して始まったが、そのメッセージは次第に泥沼化、主催者が憎悪に満ちた発言をし、ヘイトグループ(極右主義者)とつながりがあることが発覚。参加者の中には、全ての感染拡大防止義務の終了やジャスティン・トルドー首相の辞任を要求する者など、その活動の目的の広がりがみられる。

市民の反応としては、2月10日にグローバル・ニュースが発表した独自の世論調査(注)によると、回答者の約46%が「トラック運転手の言動全てに賛成しないかもしれないが、抗議者の不満は正当で同情に値する」とした。一方で、54%は「デモに参加している人々は同情に値しない」「彼らの言動は間違っている」と回答し、意見が分かれている。

(注)調査実施期間は2月8~9日、18歳以上のカナダ人1000人が対象。

(江崎江里子)

(カナダ、米国)

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