欧州産業連盟、サプライチェーンの混乱に伴う課題や提言を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年02月15日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は2月8日、サプライチェーンの混乱に対する欧州企業の対応などをまとめた報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。この報告書は、同連盟が2021年夏から初秋にかけて行った、同連盟の会員である欧州35カ国の40団体を対象としたアンケート調査に基づくもので、「新型コロナ危機」を経て、世界的にサプライチェーンが混乱する中、欧州企業が直面する課題や対応、政策立案者に対する提言をまとめたものだ。

同連盟は、「新型コロナ危機」がもたらしたものとして「原材料不足、それに伴う価格の上昇」「船舶の容量やコンテナ不足などによる出荷の遅れや輸送コストの上昇」などを挙げ、中小企業を中心に、予期しないサプライチェーンの混乱やロックダウン措置に対する企業レベルでの事前の準備不足といった課題がみえたとした。また、「新型コロナ危機」によって、経済における国家の役割が増し保護主義的になる傾向がみられ、データ・ローカリゼーション(データの国内での保存・処理)を義務付ける法令や国外へのデータ移送を制限する法令の制定、グローバル・サプライチェーンにおいて、持続可能性やデューディリジェンスを順守していることを保証する法令の採択が増えたとした。

サプライチェーンの多元化へ向けて、あらゆる政策手段の活用を提案

サプライチェーンが混乱する中、企業がとった対策としては「サプライチェーンの多元化や十分な在庫確保のための戦略を立てるなど、リスク低減を図り、将来の危機に備える」「サプライチェーン全体で透明性を高め、状況に即した計画や予測を立てるようにする」「運輸部門の供給減やコスト高への対応として、輸送形態やルートを変更する」「事業を見直し、要員数やオンラインでのサービスの提供が可能かどうかなどを検討する」などがあった。欧州産業連盟は「こうした対応の中には一時的なものもあったが、企業のビジネスモデルを大きく変容させる可能性があるものもあった」と指摘した。

欧州産業連盟は、グローバル・サプライチェーンにおける現在、または今後予想される混乱は、企業が単独で解決できるものではなく、行政の対応が必要となる局面もあると主張。その上で、EUは「開かれた戦略的自律性」という目標に沿って、貿易、産業政策といった関連政策手段を、一貫性を持って活用すべきだとした。そして、EUに対して、「『新型コロナ危機』に伴って実施されている輸出や人の移動などに関する規制の撤廃」のほか、「通関手続きのデジタル化の推進」「特恵関税の利用の促進といった、特に中小企業などの企業のコスト負担の軽減策」を求めた。

また、「企業への原材料コストの上昇に伴う影響の緩和のため、公共調達について、加盟国の関連法令に適切な価格調整に関する条項や補償メカニズムの導入を欧州委より要請する」こと、「サプライチェーンの多元化や安定した価格での供給量の確保のため、貿易政策や貿易協定を活用するとともに、供給国との連携を密にする」ことなどを提案した。

(滝澤祥子)

(EU)

ビジネス短信 63823a49c06f497c