サウジアラビア、ウクライナからの国民退去を勧告

(サウジアラビア、ウクライナ、米国)

リヤド発

2022年02月22日

在ウクライナ・サウジアラビア大使館は2月12日、ロシアとウクライナ間の緊張状態を受け、ウクライナにいるサウジアラビア人に対して、直ちに国外へ退去するよう勧告した。ウクライナへの渡航を希望するサウジアラビア人については、渡航を延期するよう呼び掛けている(2月12日付「サウジ・ガゼット」)。

ウクライナ情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりもあり、原油価格は高値水準にある。しかし、サウジアラビアを中心とするOPECプラスは2月初旬の閣僚級会合で、現行の小幅な増産ペースを維持する方針を決定しており、原油価格は引き続き高値のまま推移していくと予想される。

一方、2月15日付の米国紙「ワシントン・ポスト」は、サウジアラビアはウクライナとロシアの緊張状態を利用して、エネルギー市場だけでなく、国際政治での自国の地位を再確立しようとしているという論説を掲載した。同記事は「国際エネルギー機関(IEA)によると、短期的なエネルギー不足の緩和に利用でき、世界の原油生産能力の55%をサウジアラビアが管理しており、原油価格の高騰とインフレが懸念されている昨今の世界情勢では強力なツールとなる」としている。

同記事はまた、昨今の原油価格高騰により、米国のジョー・バイデン大統領のサウジアラビアに対する姿勢にも変化がみられると指摘している。2018年のトルコでのサウジアラビア人記者殺害事件によって、米国側の心証を悪化させたサウジアラビアにとって、地政学リスクの高まりとエネルギー問題が懸念されるウクライナ情勢の緊迫化は、米国との関係改善を加速させる可能性があるとしている。

2月21日時点で、サウジアラビア国内では新たな報道は特にはない。

(位田陸)

(サウジアラビア、ウクライナ、米国)

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