工業分野の企業はエネルギー価格高騰に苦慮、国外移転の検討も

(ドイツ)

ベルリン発

2022年02月25日

ドイツ産業連盟(BDI)は2月21日、ドイツ国内の工業分野の中小企業を対象にしたエネルギー価格に関するアンケート結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。回答企業の約9割がエネルギー価格の上昇を、企業存続の脅威、あるいは重大な課題とみなしていることが明らかになった。

同アンケートでは、自動車、繊維・アパレル、鉄鋼・金属加工、化学、製紙、セラミックなどの産業団体を通じて、418社から回答を得た。アンケートは2月1~14日に実施し、エネルギー価格の上昇について、現状への認識、今後の事業計画や政府への要望などについて質問した。

まず、「ここ数カ月のエネルギー価格の上昇に伴うコスト増が自社に与える影響」について、「自社の存続に対する脅威」との回答が23%、「重大な課題」と位置付けた回答は65%に上り、エネルギー価格の上昇が企業に甚大な影響を与えていることが明らかになった。

「エネルギー価格上昇分を顧客や消費者に価格転嫁できるか」との設問では、「ほぼできない」との回答が68%に上った。さらに、「エネルギー価格の上昇が自社の気候中立対策の計画に影響を与えるか」(複数回答)については、「投資を保留」している企業が34%と、「投資を保留していない」企業の37%より若干下回ったが、多くの企業が気候中立達成に向けた投資の延期を余儀なくされている実態が明らかとなった。一方で、「投資時期を早めている」と回答した企業も20%あった。

さらに、「構造的なエネルギー価格の上昇や現下のエネルギー価格の上昇が自社の事業計画に与える影響」(複数回答)については、「投資計画はドイツのみ」との回答が38%と最大だったものの、「今後、生産・企業立地・雇用の一部を国外へ移転することを具体的に検討している」との回答が21%、「すでに生産・企業立地・雇用の国外移転を進めている」が13%、「会社全体の国外移転を検討している」が5.5%だった。

BDIのジークフリート・ルスブルム会長は「急激なエネルギー価格の上昇が、国内の生産にさらなる影響を及ぼすことを懸念している。状況は深刻で、ドイツでの事業活動に忠実な中小企業でさえ、国外への移転を検討せねばならないほどだ」とした。そのため政府は、2021年12月の連立協定書で言及した再生可能エネルギー賦課金(EEG賦課金)の廃止(2021年11月26日記事参照)に加えて、電気税や送電網使用料などのエネルギー使用に対する各種の税や課徴金制度に終止符を打つ必要があるとして、産業界の負担軽減を求めた。

(中村容子)

(ドイツ)

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