王外交部長、ウクライナ問題に関する中国の5つの基本的立場を表明

(中国、ロシア、ウクライナ)

北京発

2022年02月28日

中国の王毅国務委員兼外交部長は2月25日、英国のエリザベス・トラス外相、EUのジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表らと電話会談を行い、ウクライナ問題に関する中国の以下5つの基本的立場を表明した。

(1)中国は、各国の主権・領土の保全を尊重・保障し、国連憲章の趣旨・原則を順守するよう求める。この立場は一貫して明確で、ウクライナ問題についても同様に適用される。

(2)中国は、共通の、包括的、協力的で持続可能な安全保障観を提唱する。一国の安全は他国の安全を代償としてはならず、地域の安全保障は軍事ブロックの強化や拡張によって保障されるべきではない。冷戦思考は完全に捨てなければならない。各国の安全保障に関する合理的な関心は尊重されるべきだ。NATOが5度にわたって東方に拡大している状況下で、ロシアの安全保障に関する正当な要求を重視し、適切に解決すべきだ。

(3)中国は、ウクライナ問題の推移を一貫して注視しており、現在の状況はわれわれにとって目にしたくないものだ。当面の急務は各関係者が自制し、ウクライナの情勢が悪化してコントロールを失う事態を避けることだ。一般の人々の生命・財産の安全は確実に保障されなければならず、特に大規模な人道危機の発生を防がなければならない。

(4)中国は、ウクライナ危機の平和的解決に資するすべての外交努力を支持し、激励する。中国は、ロシアとウクライナが早期に直接対話・交渉を行うことを歓迎する。ウクライナ問題の推移には複雑な歴史的経緯がある。ウクライナは東西交流の架け橋で、大国間の対立の前線にしてはならない。また、中国は、欧州とロシアが欧州の安全保障問題について対等な対話を行い、安全保障は不可分という理念を堅持し、均衡が取れ効果的で持続可能な欧州の安全保障メカニズムを形成することを支持する。

(5)中国は、国連安全保障理事会がウクライナ問題解決において建設的役割を発揮し、地域の平和と安定、各国の安全保障が重視されるべきと認識している。安保理が取るべきは、緊張した情勢をさらにエスカレートさせることではなく、外交的解決の推進に寄与する行動だ。この点に鑑みて、中国は、安保理決議において国連憲章第7章により授権される武力行使や制裁について引用することには一貫して不賛成だ(注)。

なお、2月25日午後には習近平国家主席がロシアのプーチン大統領と電話会談を行い、ウクライナ情勢について意見交換したと発表された。

(注)2月25日(米国時間午後5時10分~午後6時59分)に開催された国連安保理会合において、米国とアルバニアが提出したウクライナ危機の終結に関する決議案に対して、中国は棄権した。同決議案については、ロシアが拒否権を行使したほか、中国以外にインドとアラブ首長国連邦(UAE)が棄権した。

(小宮昇平)

(中国、ロシア、ウクライナ)

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