2021年の郷里送金、516億ドルと過去最高額を記録
(メキシコ)
メキシコ発
2022年02月09日
メキシコ中央銀行は2月1日、2021年12月の出稼ぎ労働者・移民などによる本国宛て送金(郷里送金)額を発表した。2021年1~12月の外国からメキシコへの郷里送金額は515億9,393万8,800ドルで、年間合計額として過去最高を記録した(添付資料図参照)。内訳は、米国からの送金が94.9%で、新型コロナウイルス感染拡大への対策として米国政府が講じた巨額の経済対策が同国で働くメキシコ人移民などを通じてメキシコ経済を下支えしたかたちだ。
郷里送金は2014年以降8年連続で増加している。特に2017年以降は増加幅が大きく、2017年は前年比で12.2%、2018年は11.2%、それぞれ伸びていた。新型コロナウイルス感染が世界的に拡大した2020年にも11.4%増加しており、米国政府が現金給付や失業給付を含む1兆9,000億ドル規模の経済対策を実施した2021年の郷里送金は前年比で27.1%と大幅に増加した。2021年の郷里送金について1回当たりの送金額を見ると、平均377ドルと少額だ。米国に移住したメキシコ人などが新型コロナウイルス経済対策の一環として受給した現金給付などの一部を、深刻な経済危機に見舞われていたメキシコに住む家族に小口で送金していた様子がうかがえる。
2021年の郷里送金額約516億ドルは、2021年を通じてメキシコが輸出した石油・石油関連製品の輸出総額233億4,440万ドルの2.2倍に上る。国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)の経済局経済課長ダニエル・ティテルマン氏は「郷里送金の増加は、米国の雇用回復と米国政府の家計支援対策を反映したもの」としながらも、「貧困層に対しては、自国政府の公共政策の方がより効率的に支援が行きわたる」と指摘した。また、ロペス・オブラドール大統領は郷里送金の増加について、2021年9月に行った年次教書演説で、現政権の成果として挙げていたが、バセ銀行の経済・金融分析課長のガブリエラ・シラー氏は「郷里送金の増加はどの政権の成果でもない」とした上で、郷里送金の増加傾向は続き、「2022年の送金額は前年の13%増に達する可能性もある」との見通しを示した(2月2日付現地紙「エル・エコノミスタ」)。
(松本杏奈)
(メキシコ)
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