2021年の鉱工業生産指数、前年比増加も新型コロナ前の水準には至らず

(ブラジル)

サンパウロ発

2022年02月28日

ブラジル地理統計院(IBGE)は2月9日、2021年通年の鉱工業生産指数(2020年=100)を発表した。前年比3.9%増加した(添付資料表参照)。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた過去2年間は2019年が1.1%減、2020年が4.5%減となっており、2年ぶりに増加に転じたものの、新型コロナウイルス感染拡大前の水準には戻らなかった(注1)。

IBGEのアンドレ・マセド調査部長は2021年の特徴として「自動車」を挙げた。同分野はトラック生産が好調(2022年1月13日記事参照)で、2021年に20.3%増と高い伸びを示した。だた、これは同分野が2020年に27.9%減と落ち込んだ反動によるもので、2021年も引き続き「新型コロナ禍」で世界的なサプライチェーンの寸断や、部品の供給不足が自動車生産工場の稼働に影響を及ぼしたと分析している。自動車について地域別に見ると、2021年にフォード・ブラジルが自動車生産を終了した(2021年1月15日記事参照)バイーア州は13.2%減となった。自動車やトラックの生産活動が前年より回復したサンパウロ州(5.2%増)や、農業用の収穫機やトラクターの生産が活発化したパラナ州(9.0%増)などがこれをカバーした。

マイナス幅が最も大きかったのは食品(7.8%減)だった。家庭で消費されるビールや肉、コーヒーなどが押し下げ要因となった。食品は消費者の購買力と所得の影響を受けやすいセクターで、インフレの加速(2022年1月19日記事参照)や消費者の所得が向上しないことなどが影響したとみられる。IBGEの全国家庭サンプル調査(PNAD)を見ると、1人当たりの実質的な月額平均所得は2021年第1四半期(1~3月)から第3四半期(7~9月)まで、2期連続で減少している(注2)。

(注1)指数(2012年=100)は2018年87.98、2019年87.02、2020年83.15、2021年86.41。

(注2)2021年第1四半期2,802レアル(約6万3,045円、1レアル=約22.5円)、第2四半期(4~6月)2,560レアル、第3四半期2,471レアル。第4四半期の結果はブラジル地理統計院(IBGE)の発表待ち。

(古木勇生)

(ブラジル)

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