財務省、2022年度国家予算案を発表

(インド)

ニューデリー発

2022年02月09日

インド財務省は2月1日、2022年度(2022年4月~2023年3月)の国家予算案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。ニルマラ・シタラマン財務相は同日の演説で、25年後に独立100周年を迎えるインドが目指す方向性を見据え、予算案の4本柱として、国家インフラ開発計画、インクルーシブ開発(Inclusive Development)、投資促進・気候変動対策など、投資のための資金調達を軸にしたと述べた。

国家インフラ開発計画では、道路、鉄道、空港、港、公共交通、水路、物流インフラの7分野の整備を進める必要があるとした。具体的には、国道の総延長を2022年度内に2万5,000キロに拡大し、新しい複合物流センター4カ所を対象とした官民パートナーシップ(PPP)方式の入札を実施する。また、国営インド鉄道が2019年に運行開始した準高速鉄道の次世代車両400台を今後3年間で生産するといった計画も挙げた。

インクルーシブ開発には、農業や零細・中小企業(MSME)支援、保健などを盛り込んだ。農地の現況確認、農薬や肥料の散布などを行う農業用ドローンの活用促進を図るほか、新型コロナウイルス禍で導入した零細・中小企業向けの緊急信用枠保証制度(ECLGS)の信用枠総額を拡大し、対象期間を1年間延長して2023年3月までとする。また、新型コロナ禍でメンタルヘルスの問題が顕在化していることを踏まえ、質の高いカウンセリングやケアサービスの提供を図る「国家遠隔メンタルヘルス計画」に着手するとした。

投資促進では、2020年度に導入した製造業振興策である生産連動型優遇策(PLI)を通じて第5世代移動通信システム(5G)のエコシステム構築を後押しする。そのほか、気候変動対策の一環で太陽光発電の設備容量を2030年までに280ギガワット(GW)に引き上げるため、太陽光発電モジュールを対象としたPLIの予算を計上した。また、防衛産業の外国依存度を引き下げるため、同分野の設備投資の国内調達率を前年度の58%から68%に引き上げる。なお、インド準備銀行(中央銀行)が2022年度内に暗号資産(仮想通貨)技術を用いたデジタル通貨「デジタルルピー」を発行する計画も明らかにした。

投資のための資金調達としては、各州政府に対する中央政府からの財政支援を強化するほか、各州予算の財政赤字を州内GDPの最大4%まで認めつつ、うち0.5%を電力分野の改革に充てることを要請した。

歳出全体を主要分野別でみると、利払い費を除けば、前年度に引き続き防衛〔3兆8,537億ルピー(約6兆1,659億円、1ルピー=約1.6円)〕が最大で、交通(3兆5,185億ルピー)、州政府交付金(3兆3,434億ルピー)が続く(添付資料表参照)。

歳入面では、各種税制の見直しで、法人税や個人所得税の基本税率には変更が加えられなかった一方で、暗号資産を含む民間の仮想デジタル資産の取引で生じた利益に対する30%の課税方針を示した。基本関税率は、半導体部品や医療用レントゲン機器・同特定部品などで引き上げる一方、プラスチック加工機械の生産用ボールねじ、LMガイドなどの特定部品、携帯電話に組み込まれるカメラ用レンズなどの品目で引き下げた(詳細は財務省発行文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照)。

2022年度国家予算案の歳出は総額39兆4,491億ルピーで、前年度(修正値、以下同)比4.6%増となった。一方、借り入れ(公債金)を除く歳入は総額22兆8,371億ルピー(前年度比4.8%増)を計上した。財政赤字は対GDP比で6.4%と、前年度の6.9%を下回る見込みとなった。同予算案の詳細はインド政府の予算案ポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開されている。

(広木拓)

(インド)

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