第4四半期のGDP成長率は4.8%、3期連続で減速

(香港)

香港発

2022年02月03日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)統計処は1月28日、2021年第4四半期(10~12月)の実質GDP成長率(推定値)を前年同期比で4.8%と発表した(添付資料図参照)。四半期ベースでは2021年通年を通し4期連続でプラス成長となったものの、前期(5.5%)からは0.7ポイント低下し、第2四半期以降3期連続で減速した。

2021年通年では6.4%と、2018年(2.8%)以来のプラス成長となった。

2021年第4四半期のGDP成長率を需要項目別にみると、個人消費支出は前期(6.8%増)から0.8ポイント低下して前年同期比6.0%増、政府消費支出は前期(5.0%増)から0.9ポイント低下して4.1%増と、いずれも減速した。固定資本形成は、前期(13.1%増)から13.0ポイント低下して0.1%増にとどまった。

貿易は、財輸出が前年同期比13.3%増と前期(14.2%増)から1.1ポイント低下、財輸入も9.7%増と前期(16.9%増)から7.2ポイント低下した。

サービス輸出は前期(5.4%増)から0.3ポイント上昇して前年同期比5.7%増、サービス輸入は前期(6.0%増)から0.8ポイント低下して5.2%増となった。

香港政府報道官は同日のプレスリリースにおいて、「香港経済は、輸出の力強い伸びと個人消費の改善により、2021年第4四半期にさらに回復が進んだ。2021年通年の成長率は6.4%と、2年(2019年および2020年)続いたマイナス成長から脱却した。しかし、2021年の名目GDPは2018年を約2%下回る水準にとどまっている」と、「新型コロナ禍」や2019年に香港で発生したデモ・抗議活動以前の水準に回復していないことに触れた。その上で、今後の香港経済の見通しについて、「2022年もさらなる成長が見込まれるが、域内の新型コロナウイルスの感染状況をはじめとするさまざまな不確実性の影響を受ける。感染拡大第5波(注)と防疫強化措置は経済活動に再び影響を与え、センチメント(市場心理)を押し下げている」と懸念を示した。また、報道官は、この他に注視が必要な要素として、世界的な景気回復の動向、主要エコノミーにおける高いインフレ、米中関係などの外部環境を挙げた。

英国の経済調査会社キャピタルエコノミクスのエコノミストであるシーナ・ユエ氏は「感染拡大第5波の収束には想定よりも時間を要しており、香港経済の短期的な見通しは厳しくなりつつある」と述べた(「サウスチャイナ・モーニングポスト」2022年1月29日)。

香港政府は2月23日の2022~2023年の予算案の公表時にあわせて、2021年第4四半期のGDP成長率の詳細および2022年のGDP予測値を公表する。

(注)香港では一般的に、2020年1月の新型コロナウイルス感染拡大開始を「第1波」、同年3月中旬以降の輸入症例拡大を「第2波」、同年7月中旬以降と11月下旬以降の域内感染拡大をそれぞれ「第3波」「第4波」と呼んでいる。

(野原哲也)

(香港)

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