EU・米国外務閣僚、欧州とウクライナのエネルギー安保の強化で一致

(EU、米国、ウクライナ)

ブリュッセル発

2022年02月09日

EUのジョセップ・ボレル・フォンテーリャス外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼任)および欧州委のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は2月7日、米国のアントニー・ブリンケン国務長官らとともに、米国ワシントンD.C.で開催された第9回EU・米国エネルギー協議会に出席した。同会合の開催は2018年7月以来約4年ぶり。緊迫するウクライナ情勢を受けて、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長とジョー・バイデン米国大統領が1月28日の共同声明において、EUおよびウクライナのエネルギーの安定供給に関して同協議会の場で検討すると発表していた。

会合後の共同声明(プレスリリース)では、まずEUおよび周辺国へのエネルギー供給に関するあらゆる潜在的リスクに対処するために、EUと米国が積極的に協力していくこと外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを約束したと表明。より具体的には、地政学的リスクおよび気候変動対策がエネルギー市場に及ぼす影響を考慮し、両者が協調して国際的な液化天然ガス市場の安定性を確保すべく、供給力の増強と供給元の多角化に取り組んでいくとした。また、ウクライナはロシア産天然ガスをEUに輸出するパイプラインの戦略的に重要な経由国であることから、引き続きEU・ウクライナ間ガス輸送の新ルートの構築および供給能力の増強を図り、ウクライナの主権をエネルギー安全保障の面から支えていくことを確認した。

ボレル上級代表は会合後、ブリンケン国務長官と共同記者会見に臨み、「ロシアは欧州への巨大なエネルギー供給力を地政学的な優位性確保の梃(てこ)に用いている」とロシアの対応を批判した。EUは天然ガスの約95%を域外からの輸入に依存しており、うち4割程度をロシアから輸入している。そのためボレル上級代表は、中長期的には気候中立を目指すとはいえ、脱炭素化を進める移行期のエネルギーとして天然ガスは短期的に不可欠で、ロシアからの供給の不安定化に備え、天然ガスを中心とするエネルギー調達の多角化がEU、さらにウクライナや西バルカン諸国を含む周辺国の喫緊の課題だと説明した。供給元としてはノルウェーのほか、カタール、アゼルバイジャンなどからの輸入増を視野に入れているとみられる。他方、シムソン委員は特定国への依存脱却を目指しつつも、最大の供給元である米国からの輸出増に期待しているとも述べた。

冷戦後で最も危険な局面、引き続き外交努力を続ける

記者会見の質疑応答でボレル上級代表は、ウクライナ・ロシア間国境の緊張状態についての評価を尋ねられ「冷戦後の欧州の安全保障において最も危険な局面にある」と事態の深刻さを認めつつ、「まだ外交的な解決策の余地はある」とし、引き続き平和的解決に向け努力を続ける考えを示した。他方、ウクライナへの侵攻に備え、EUとしてロシアに対し貿易や経済面で制裁を発動する構えがあるとも述べた。

(安田啓)

(EU、米国、ウクライナ)

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